- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県上天草市
- 広報紙名 : 広報上天草 令和7年9月号
■「認知症」のこと、どれくらい知っていますか
毎年9月は「認知症月間」および9月21日は「認知症の日」です。認知症は、さまざまな病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶・判断力など)が低下して、社会生活に支障を来す状態のことを言います。
認知症の中でも、「アルツハイマー型認知症」の症例が日本では最も多く、全体の約7割を占め、主にもの忘れなどの記憶障害や判断力の低下といった症状が見られます。治療方法は、投薬治療により症状の進行を遅らせるもので、現在は、完治が難しいと言われています。
■認知症と共生できる社会に
超高齢社会の日本では、いまや認知症は身近に起きる出来事です。自分自身や家族など身近なところで発症することもあり得るため、それぞれの立場で、認知症と向き合い、ともに生活をしていく必要があります。
本号では、実際に認知症と向き合いながら生活している人とサポートしている人をそれぞれ紹介します。この機会に、みんなで認知症に対する理解を深め、ともに生活できる社会をつくりましょう。
■認知症がある人とご家族へインタビュー
▽島﨑タエ子さん(79歳)
「できることはしたい」
島﨑さんは、今から約15年前に「若年性認知症」と診断されました。最初に認知症の症状が見られたのは、さらにその1年前。同じことを何度も言うようになり、感情の起伏と妄想が激しくなりました。
ご本人は、認知症と診断されていることを理解されていませんが、周りのサポートを受けながら、明るく元気に生活しておられます。
今回は、島﨑さん本人と、島﨑さんをサポートをしているご家族(子)の田嶋多津枝(たつえ)さんにお話しを伺いました。
※取材日:令和7年7月30日(水)
▽ご本人へのインタビュー
(日常生活について)
Q.今の生活で「できること」「楽しみにしていること」は何ですか?
A.洋服が大好きです。人とお話するのが好きです。笑顔になるのがよかですね。今の楽しみは、孫と会うことです。孫が来れば一緒に食事に行くことがあります。
(介護サービスの利用について)
Q.デイサービスではどんなことをして過ごしていますか?ヘルパーさんとの関わりで、助かっていることはありますか?
A.洗濯物があればたたむのを手伝ったりしています。できることをしたいと思っています。
Q.サービスを利用して、生活にどんな変化がありましたか?
A.色々な人がおらすけん楽しかです。
(認知症カフェについて)
Q.認知症カフェで過ごす時間は、どう感じていますか?印象に残っている出来事や、うれしかったことはありますか?
A.知っている人ばっかりで楽しかです。みんな「わが来んばおもしろなか。」と言ってくれます。
(家族や地域とのつながり・支援について)
Q.ご家族や地域の方との関わりで、うれしかったことはありますか?
A.近所の人に話しかけてもらって嬉しかったです。
Q.家族についてどう思われますか?
A.家族の助けはなからんとダメですね。
▽ご家族へのインタビュー
(認知症と向き合う日々について)
Q.ご本人が認知症と診断されたとき、どんな気持ちでしたか?
A.最初の症状は、16年くらい前。同じことを何度も言うようになりました。そして、母の性格はそれまでとは真逆になり変わってしまい、私は涙が止まりませんでした。父もお世話をしていましたし、当時は父も私も一生懸命でした。
元々母は病院嫌いでしたが、病院に連れて行って検査を受けてもらいました。病院では薬が処方されて、母はものすごく症状が落ち着きました。
薬は忘れずに飲むよう父が助言していました。また、料理の作り方がわからなくなってきて、当時一緒に暮らしていた父がたびたび母に助言をしていました。すると、料理もそれまでより出来るようになりました。
その後、父が病気で弱ってくると、逆に母が献身的にお世話をするようになりましたが、父は今から9年ほど前に亡くなりました。
(認知症カフェ・介護保険サービスの活用について)
Q.認知症カフェや介護保険サービスを利用するようになったきっかけは何ですか?
A.父が亡くなってから、母は落ち込んで認知症が進みましたが、デイサービスの利用を拒んでいたので、当時、大矢野老人福祉センターで始まった「認知症カフェ」を勧めました。私は当時施設内で仕事をしていたこともあり、本人も安心して参加するようになりました。その後、「認知症カフェ」で外出するのに慣れてきたため、デイサービスの利用も開始しました。
Q.利用してみて、家族としてどんな気持ちの変化がありましたか?
A.安心感があります。母は、一人で家にいるとよく寝ていますので。母がコロナになったときに、ヘルパーさんが感染対策をしてサービス提供を続けてくれたことは、仕事をしている家族にとってはとてもありがたかったです。
(支え合い・相談の大切さについて)
Q.つらいとき、誰かに相談できたことで救われた経験はありますか?
A.私の子供たち。子供たちは母の認知症をすんなり受け入れてくれました。私が母は認知症だと伝えると、「うん。わかった。」と言って、それまでと何も変わらず母と接してくれました。私は子供たちに救われました。また、母の症状が出始めたころは、看護師のいとこによく相談していました。いとこが「病院に連れて行った方がいい。」と教えてくれて、いとこ夫婦に助けられました。今でも良き相談相手です。
Q.「家族だけで抱え込まないこと」の大切さを、どのように伝えたいですか?
A.家族だけで抱え込まないことが大事で、家族の方は自分のことも守ってほしいです。そして、考え込まずにオープンにした方がいいと思います。
また、認知症を理解してくださる人が増えるといいなと思います。まずは知り、知ったことを良い方向につなげることが大事。個人をおとしめるようなことにはして欲しくないなと思います。
(市民の皆さまへ)
Q.認知症の人と接するとき、心がけてほしいことはありますか?
A.これまでどおり接してほしいです。
Q.同じように悩んでいるご家族に、伝えたい言葉はありますか?
A.自分の(家族自身の)理解者を増やしてほしいと思います。そして、地域にだけ(理解や助けを)求めず、家族でできることもした上で、地域の方に協力を求めた方がいいと思います。
母が母らしく生活できているのは、今住んでいる地域と地域の方々や各関係者のおかげですが、どうしても難しい場面が出てきます。その時は、入所もやむを得ないと思います。何が母にとって一番幸せなのか?を考えていますが、本人に聞けるうちに聞いておいた方がいいと最近思うようになりました。