- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県阿蘇市
- 広報紙名 : 広報あそ 2025年2月号
■「治す」だけじゃない 市民の健康を守る
病院の仕事は、病気を治すことだけではありません。阿蘇医療センターは公立病院として市民が健康な生活を続けることができるよう、さまざまな取り組みを行っています。その1つとして昨年4月に始まったのが、市民向けの糖尿病・腎臓病教室です。教室を担当する糖尿病・代謝・内分泌内科部長の近藤龍也医師と腎臓内科の濱口亜実医師にお話を聞きました。
「地域に開かれた病院」を目指す
◆専門医として阿蘇医療センターに着任した令和6年度から教室が始まりました。
近藤龍也医師(以下、近藤):私は糖尿病の専門医として熊本大学病院から来ました。糖尿病や腎臓病の専門医は、そもそも数が多くない上にその大半が都市部に集中しているため、これまで阿蘇医療センターには専門医がいませんでした。阿蘇地域に専門医がいないことはずっと課題だと感じていたため、希望してこの病院に来ました。
重症化した糖尿病患者の多さは阿蘇地域の課題であり、この課題に取り組むのが私の使命だと考えています。この取り組みの1つとして令和6年度から市民向けの教室を始めました。
◆教室ではどんな内容の話をしますか?
濱口亜実医師(以下、濱口):食事や運動、薬など糖尿病や腎臓病を正面から扱ったテーマだけでなく、心臓や脳卒中、認知症、骨折、など周辺の疾患や関わりのある病気についてもそれぞれの専門の先生に説明してもらいます。
これは、腎臓病や糖尿病が心臓や脳などにさまざまな症状や合併症を引き起こし、命に関わる影響を体に与えてしまうからです。
近藤:糖尿病は、早期の治療が重要です。今は効果の高い治療薬もあるため、早期に治療へ繋げることができれば、病気と上手に付き合うことができる場合もあります。一方で、糖尿病を放置し、さまざまな合併症を併発した状況で受診をする人が多くいます。こうした状況になると失明や足の切断、人工透析など、その後の生活の質に大きな影響を与えかねません。教室を通して市民に正しい知識を身に着けてもらい、危機感を持ってもらうことで、少しでも早く受診するようになってほしいです。
教室が自分の健康や体のことを見つめるきっかけになればいいなと思います。
濱口:病気や体のことについてあまり詳しくない人や、健診を受けたことがないという人にぜひ参加してもらいたいです。
◆糖尿病・腎臓病教室の他に取り組んでいきたいことはありますか?
近藤:健康診断での悪い結果が出ても放置する人が多くいます。先ほども言いましたが、糖尿病や腎臓病の治療は放置すると取り返しがつかなくなってしまいます。自治体の保健師さんたちとも連携し、こうした人たちを早期の治療につなげる方法を考えていきたいです。
また、医療センターのいろいろな先生が、それぞれの専門分野に関するテーマについて、事業所や地域の集まりで話す出前講座を整備したいと考えています。市民の皆さんが健康に関する知識をつけることで、自分の体のことを病気になる前に考えることにつながると思います。
◆病院に行かないとお医者さんには会えないということもあり、市民からは少し遠い存在のように感じる人も多いのでは?
近藤:出前講座などを通して市民の皆さまとの接点を増やしていきたいと考えています。市民と距離の近い、開かれた病院にしていきたいですね。市民の皆さまが健康を維持できるようになればうれしいです。
▽糖尿病・腎臓病教室