くらし くらしと人権 Vol.66 子どもと戦争を考える

■1 二十四の瞳
学生の頃読んだ小説に、壷井栄さんの「二十四の瞳」があります。小豆島を舞台に、昭和3年の「おなご先生」大石先生と12名の1年生の出会いから戦後にかけての交流を描いた作品です。昭和29年には、木下恵介監督、高峰秀子主演で映画も制作されました。20年ほど前、そのデジタル版が上映され、鑑賞した際のことです。大石先生と子供たちの出会いのシーンが始まると、なぜか涙が出てきました。まだ子どもたちが登場しただけなのに、どうして自分は泣いているのか、不思議でした。その後、ある作家も同じ体験をしていて、その謎解きを読む機会がありました。
涙の理由とは、その12名の子どもたちを待っているその後の人生、特に過酷な戦争を経験することになるのを知っていたからでした。原作も読んでいて、古い映画なのでビデオで見たこともあり、TVドラマ版も見ていました。キラキラした瞳で大石先生の呼名に答える子どもたちを見た時、どうしてこの子たちがあのような悲劇に遭わなければならないのか、という思いを禁じえなかったのだと思います。虚構の世界であっても、子どもたちが悲しみや辛さを経験したり、背負ったりすることを人は受け入れたくないのかもしれないと自問自答しました。

■2 今年は戦後80年
翻って今の世界を見る時、子どもたちを取り巻く悲惨な状況があることを私たちは知っています。どうしようもない無力感に襲われたり、そのような現実から目を背けたくなったりする辛い思いもあります。
しかし、仮に何もできなかったとしても、常に関心を持つことはできます。その現実をないことにしないこと、それが大切なのだと思います。
そしてまた、暑い夏がやってきます。終戦の年も暑かったと聞いています。今年は戦後80年の節目の年です。様々な場面で、メディアは戦争を取り上げると思います。その機会に、戦争のことを、そしてその犠牲となるかもしれない子どもたちのことを考える時間を持ってはどうでしょうか。

問合せ:社会教育課 地域人権教育指導員
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