- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県指宿市
- 広報紙名 : 広報いぶすき 2025年9月号
■カビと皮膚病
冬虫夏草をご存じでしょうか。冬は虫の姿をしているけれど夏になると草のようになるというのでこの名前があります。日本の山の中を歩いていても時々見かけることがありますが、中国では漢方薬として重宝され、パミール高原などで採取され、現地の人々の収入源にもなっているようです。
冬虫夏草は、虫の幼虫などにカビが寄生し、虫の体を菌糸で満たし、そこから発芽するように生えてくるものです。
皮膚科では、カビによる感染症がいろいろあります。まず最も身近なところでは水虫が気になります。水虫は、白癬(はくせん)菌というカビによってもたらされる皮膚の感染症です。症状が出る部位によって、足白癬、手白癬、頭部白癬、股部白癬、体部白癬、爪白癬などの呼び名があります。手や足では指の股などに水膨れやただれを生じ、痒くなります。股や体の白癬は輪っかになって広がり毛穴に一致した盛り上がりを作り、かさかさと皮が薄く剥けてきます。頭ではかさかさしたフケが出るようになって髪の毛が抜けやすくなります。爪に感染すると爪が白く濁って分厚くなり爪の変形も起こります。
手や足、体の水虫は、塗り薬を広めに塗ることで2週間〜4週間ほどで治っていきます。頭の水虫は毛穴の中までカビが入ってくるので塗り薬だけでは治らず、飲み薬が必要になります。爪の場合も、爪の角質の中にカビが入り込んでバイオフィルムを作るために塗り薬が効きにくく、爪を削ったり飲み薬を飲んで治療します。
水虫を作るカビは、人から人にうつるものや、土の中にいるカビが人にうつるもの、動物から人にうつるものなどがいて多彩です。
人などの哺乳類は恒温動物と言って、高い体温を持っていますが、このように進化した理由の一つにカビがうつらないようにする目的があったともいわれています。免疫状態が悪くなると、内臓などの高温の部位でカビが繁殖することがありますが、普通は内臓にはカビは感染しにくく、体温の低い皮膚で感染するようです。
カビが皮膚についているかどうかは皮膚や爪のサンプルをとって顕微鏡で調べます。心配な人は皮膚科を受診してください。
今月のドクター:指宿医師会 宇宿 一成(うすきかずなり)
問合せ:指宿医師会
【電話】34-2820