くらし 戦争を知らない時代に問う、平和の意味(6)

■戦争を知らない私たちから、戦争を知る先輩たちへ
戦争体験者の記憶と、今を生きる学生の声を通して戦争の怖さと平和の尊さを見つめます。

牧園中学校では、修学旅行で長崎原爆資料館を訪れたことをきっかけに、牧園町の戦争体験者に当時の様子を聞く平和学習を始めました。今回は戦争体験者の宮原アイさん(88)と、生徒を代表して2年の富尾綾さん、武田実希(みつき)さんに戦争に対するお互いの考えを交わしてもらいました。

Q.戦争の一番怖いところは何だと思いますか。
富尾:命が一瞬で奪われるという事実が、一番怖いです。何の前触れもなく、誰かが亡くなるという状況は、想像するだけで苦しいです。
武田:私は「いつ死ぬか分からない」日常が怖いと思います。先の見えない不安の中で毎日を過ごすなんて、精神的にもつらすぎる。
宮原:空襲警報が鳴ると防空頭巾をかぶって、1キロ以上走って逃げることもありました。頭上を通る飛行機の音が本当に恐ろしくてね。どう生き延びるかをいつも考えていました。あの頃は統制のための取り締まりも厳しかった。父が警察の取り調べを受けて、顔を腫らして帰ってきたこともあります。血まみれのシャツを無言で投げ捨てた父の背中を、今も忘れられません。

Q.お父さんは戦争中の話をしなかったと聞きました。
なぜだと思いますか。
宮原:父は戦争中のことを一切話しませんでした。私も聞けませんでしたよ。家族に伝えたくない、つらい記憶だったのだと思います。
富尾:自分の子どもに、苦しさを感じさせたくなかったんじゃないでしょうか。愛情があるからこそだったのかもしれませんね。

Q.若い世代が戦争の話を聞くことには、どんな意味があると思いますか。
富尾:実際に体験した人の話を聞くことで、当時の生活や感情までイメージできます。本やインターネットで調べるだけじゃ得られない、肌で感じることができると思います。
武田:体験者にしか語れない、感情の奥深くの部分を直に聴くことができるのは、とても価値があることだと思います。語ってくれる方がいるうちに、しっかり聴いておくことが大事だと思います。
宮原:体験していない人にとって、本などでは当時の気持ちまでは伝わりづらいのかも。直接言葉で伝えることで、当時の感情が少しでも伝われば良いですね。

Q.戦争を体験していない人は、戦争体験をどうすれば効果的に語り継いでいくことができると思いますか。
武田:例えば文化祭で戦争を題材にした劇をやるなど、地域の人にも見てもらえるような活動を増やしていけたら関心を持つ人も増えると思います。一人でも多くの人が、かつて戦争があったことに思いをはせることが大切だと思います。私たちはその歴史をつないでいかないといけない。

Q.学生の2人が、80年前に今の年齢(14歳)で暮らしていたら、その生活をどう感じると思いますか。
富尾:恐怖や悲しさを感じると思います。なんで戦争しているんだろうと疑問と不安でいっぱいになると思います。武田:私も怖いです。国の偉い人たちの判断で始まった戦争に、一般市民が巻き込まれて命を落とす。その中で何もできないという無力さを感じると思います。

Q.宮原さんが今、80年前の年齢(8歳)で暮らしていたら、その生活をどう感じると思いますか。
宮原:とても幸せな気持ちだと思います。当時最も欲しかったのは「自由」。今の時代は本当に輝いていますよ。今の若い人たちは、その光の中で生きている。そんな感覚です。

Q.あなたにとって「平和」とは。
富尾:将来のことを考えたり、勉強に打ち込めたりする、今の学生生活そのものが平和だと思います。
武田:友だちと遊んだりけんかしたり、感情を自由に出せること。平和だからこの感情を友だちと共有できると思います。
宮原:やはり「自由」があること。自分の意思で生き方を選べること。それが私の考える平和です。

■世界で起きている戦争が、私たちの生活に影を落とす現在、その戦争は遠くの出来事なのでしょうか。今を生きる私たちにできることは、戦争体験者の声を受け取り、次の世代へつなげ、悲惨な体験を繰り返さないこと。私たちは、戦争の記憶を体験者の生の声で受け取れる最後の世代です。だからこそ、聴くこと・考えること・伝えることの重みは、これまで以上に大きくなっています。皆さんも平和の意味を考え、あなたの思いを誰かに伝えてみませんか。