文化 いにしえの香り No.9 ~わが町の文化財紹介

「いにしえの香り」では、市で行っている文化財等調査保存事業などで発見された価値の高い新資料を、隔月で紹介しています。

■菅原神社に残された災害記録
今回は市来湊にある菅原神社のお話です。
菅原神社は、現在菅原神社跡地公園となっていて赤い鳥居と祠(ほこら)、狛犬などが残されています。御神体は市来神社に合祀(ごうし)されています。
市来神社に保管されている菅原神社の棟札(むなふだ)には、『享保元(1716)丙寅十一月十五日「天満宮再興記」』として、江戸時代に市来湊に大きな竜巻が近づいたことが記録されています。そこには、波が天まで激しく上がり、電光と雷鳴がとどろき、巻き上げられた物が上空に飛ぶ姿も見えたと書かれています。竜巻は別府沖付近で発生し、たちまち猛烈な竜巻となって市来湊に近づいてきました。当然、市来湊は壊滅すると思われました。
ところが、竜巻は菅原神社に大きな損害を与えただけで、すぐに冠岳方向へ通り過ぎていったのです。湊村には何の損害もなかったことから、村人たちは、「きっと天神様が身代わりとなって村を守ってくださったに違いない」と思いました。天神様の霊験あらたかなことに感じ入り、すぐに社殿を再興することにしました。村の人たちは喜んで寄付し協力しました。そして、このことを長く伝えるために棟札に記しました。