くらし 令和7年度 施政方針(1)

沖縄市議会6月定例会において、花城市長より令和7年度施政方針が発表されました。今月号は、その全文を掲載します。

第436回沖縄市議会定例会にあたり、令和7年度の市政運営に関する所信を申し上げ、市民の皆さま並びに議員の皆さまのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

この度の市長選挙におきまして、多くの市民の皆さまのご信託を賜り、第14代沖縄市長に就任させていただきましたことに、心から感謝を申し上げます。本市のさらなる発展を託していただき、市民の皆さまの期待の大きさと責任の重さに、改めて身の引き締まる思いであります。

「活力あふれる沖縄市に復活させる」という、確固たる信念をもって、市政運営を担っていた桑江朝千夫前市長は、誰よりもこのまちを愛していました。
思いもよらぬ訃報から半年が経過するなか、政治の師と仰ぎ、教え育てていただいたことの全てが、時おり去来し、ふと、こだわりが強かった先達のあの笑顔に、もう会うことは叶わないのかと思うと、やり場のない深いかなしみがこみ上げてきます。
しかしながら、3期10年余にわたって積み重ねられてきた数多くの実績と、多くの市民の皆さまから私に与えていただいた大きな力が一つとなり、本日、ここに導かれていることを胸に刻み、私は、市民の皆さまの思いを原動力に自らを奮い立たせ、沖縄市のさらなる発展に向けた新たなまちづくりへと、挑戦する覚悟であります。

昨年度は、市制施行50周年の大きな節目の年であり、激動ともいえる時代を果敢に切り拓き、今日の沖縄市を築いた先人たちの礎を再認識する意義深い1年でありました。
新たな半世紀がスタートし、本市の将来を展望した時、まちづくりの根幹は、これまで先人たちがつくり上げてきた地域の魅力にあると確信しております。
私は、地域固有の魅力と価値を一層高め、次の世代へ発展的に継承していくことが重要であると考えており、市制100周年への確かな礎となる、自治会を核とした活気あるまちづくりに全力で邁進してまいります。

今年は、太平洋戦争が終結してから80年となります。沖縄戦では、一般の住民を含む県民約12万人が、その尊い命を落としました。
私は、平和であるからこそ、今の繁栄があるということを深く認識し、悲惨な戦争を二度と繰り返してはならないとの決意のもと、沖縄戦終結の地となった本市が、平和の尊さを継承し、発信する取り組みを継続的かつ総合的にすすめ、平和な世をしっかりと後世につなげてまいります。

昭和60年に決議した核兵器廃絶平和都市宣言は、本年、40年の節目となります。
我が国は世界で唯一の被爆国であり、再び地球上にあの広島・長崎の惨禍を繰り返させてはならないとの誓いを新たに、いま、改めて宣言文の意義をかみしめ、平和行政を通じた核兵器廃絶による人類の恒久平和実現に取り組んでまいります。

災害に目を向けますと、昨年4月3日に台湾付近で発生したマグニチュード7.7の地震により、沖縄県内に津波警報が発表されるとともに、11月に発生した沖縄本島北部豪雨では大きな被害が生じました。本市におきましても、今年1月に浸水被害が発生し、市民生活に多大な影響を及ぼすなど、自然災害の脅威が、私たちの目前まで迫ってきていることに危機感を持ち、実効性のある対策を講じていかなければなりません。
私は、激甚化・頻発化する自然災害から市民の生命と財産を守るため、新たに令和7年4月1日より防災危機管理室を創設し、防災・減災体制の強化を図るとともに、市全体の防災力を高める自助・共助・公助の輪を一層、強固にするための取り組みを推し進めてまいります。

防災をはじめ、防犯や福祉、子育てなど、地域の様々な課題解決に大きな役割を果たしている自治会は、重要な存在であります。
地域には、歴史的な文化財や独自の伝統文化、豊かな自然環境、市民活動が活発な地域性などの特有の魅力があり、住み暮らす人々の心の拠りどころとなっております。
市民の皆さまが、自らの地域の特色や魅力を愛し、誇りとする「オンリーワンの地域づくり」をすすめ、ひいては市全体の魅力向上へとつなげてまいります。

地域に根付いた伝統芸能であるエイサーは、本市の財産であります。戦後復興を期して開催された「全島エイサーコンクール」は、今や、沖縄の夏の風物詩と形容される「沖縄全島エイサーまつり」へと飛躍的な成長を遂げ、今年70回目を迎えます。
青年会をはじめとするエイサーの担い手は、地域の特色あるエイサー文化を体現する継承者であり、日々練習や工夫を重ね、島人の魂を駆り立て、人々を魅了する演舞へと挑み続けています。そのひたむきな姿に敬意を表するとともに、晴れの舞台となる第70回 沖縄全島エイサーまつりが演者、観客双方の思い出に残る大会となるよう、全力を傾注してまいります。

地域経済の活性化に向けては、沖縄サントリーアリーナやモータースポーツマルチフィールド沖縄などの、スポーツと観光を融合した取り組みのさらなる展開が重要となります。
スポーツを通じた新たな観光交流拠点の形成を図るため、コザ運動公園のリニューアル整備をおこなうとともに、沖縄サントリーアリーナのバスケットボール聖地化やインバウンドの誘客拡大によるまちの活性化に取り組んでまいります。

ナイトZOO開園による活況とともに、昨年度に過去最高の入園者数を記録した沖縄こどもの国につきましては、施設のリニューアルやエリア拡充はもとより、国内外で人気を誇る動物の積極的導入と斬新な展示手法を掛け合わせ、来場者を一層の興奮体験へと誘います。
訪れるたびに、主役となる動物たちがこどもたちや観光客を経験したことのない発見や驚きに引き合わせ、ここでしか体験できない感動に満ちた動物園づくりに取り組んでまいります。

東部地域のみならず、本島東海岸一帯の活性化の旗手と期待される「潮乃森」につきましては、早期整備に向けて全力で取り組むとともに、世界中からリゾート地として選ばれるためのマリーナ整備や宿泊施設の誘致、島全体がカーボンニュートラルを実装する仕組みづくりに注力してまいります。

中心市街地につきましては、スタートアップ支援や商業振興により、多くの創業者の輩出や商店街に新たな店舗が軒並みオープンするなどの実績を上げております。起業にチャレンジしたい人が内外からこぞって集まり、スタートアップが続出するまちへと成長させるべく、取り組んでまいります。
また、国・県をはじめ、地域や商店街の皆さまと連携してすすめてきたバスタ構想は、事業化に向けた新たなフェーズへと移行しつつあります。
商店街のリニューアルはもとより、交通拠点を中心に、本市のランドマークや観光・商業エリアへと快適に回遊できる新たな公共交通ネットワークの構築に取り組んでまいります。

かけがえのない存在であるこどもたちが健やかに育まれ、これからの時代や未来を果敢に切り拓いていけるよう、まち全体が後押ししていかなければなりません。
喫緊の課題であるこどもの貧困の連鎖を断ち切るため、対策の強化に取り組むとともに、新たな命を望む方々の希望が叶う環境づくりをすすめてまいります。

時代とともに、社会構造や家族の在りようが変化し、人々のつながりが希薄化するなか、年齢や障がい、経済状況といった属性にかかわらず、誰もが地域の中で役割を持ち、ともに暮らしていけるまちづくりが求められております。
これまで準備をすすめてきた重層的支援体制整備事業を、県内に先駆けて今年度よりスタートさせ、行政はもとより、地域や関係団体の皆さまと手を携えて、福祉の未来像となる地域共生社会の実現に取り組んでまいります。