- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道旭川市
- 広報紙名 : こうほう旭川市民「あさひばし」 令和7年8月号
■〔インタビュー〕在宅医療の現場で活躍している方にお話を聞きました
在宅医療は、訪問診療を行う医療機関(現在、市内に31か所)をはじめ、医療サービスを提供する事業者など多くの皆さんによって支えられています。現場で活躍されているお二人に在宅医療への思いを聞きました。
▽「どうしてほしくないか」が重要です
〔医師〕今本千衣子(いまもとちえこ)さん 今本内科医院院長(旭川市医師会地域福祉部担当理事)
当院では、ほぼ毎日5人前後、全体で約50人の訪問診療を行っています。
在宅医療の現場では、住み慣れた場所で医療を受けられるメリットがある一方で、24時間看護が必要なことから「こんなに大変だと思わなかった」という現実に直面する家族がいらっしゃいます。私は、家族と患者さん本人の折り合いがつくことが重要で、自宅に過度にこだわることなく選択肢を広げるべきだと考えています。そのためには、日頃からACP※の実践が大事であり、「どうしてほしいか」より「どうしてほしくないか」の観点で、理想だけでなく、その実現が困難な場合の選択肢も話し合っておくとよいと思います。
なかなか話し合うタイミングはないものですが、大病などの人生のイベントが起きてしまったときが良い機会です。そして、ACPは気持ちの変化に合わせて変えていけることも覚えておいてください。
すでに療養中の方は「これは無理だろう」と最初から決めずに、諦めないで医師や看護師に希望を伝えることで新たな選択肢も見つかるはずです。
最後に、在宅医療の世界で働くことを考えている方には、先に、病棟等で経験を積んでから始めてほしいと思います。また、在宅医療は時として密室になる可能性もあることから、より高い倫理感が必要になることも忘れないでほしいと思います。
※アドバンス・ケア・プランニング=もしものときのために、自分が望む医療やケアを前もって考え、家族や近しい人、医療・介護関係者等と話し合い、共有する取組み。
▽訪問看護の利用に遠慮は無用です
〔看護師〕辻紀子(つじのりこ)さん 訪問看護ステーションモモ代表取締役社長
訪問看護は病気や障害のある方の自宅等、日常生活の場にお伺いし、療養のお手伝いをする仕事です。医師の指示の下で、例えば、服薬指導、病状の観察・保清、食事・水分・栄養状態の観察等を行うほか、日常生活の自立を目的とした場合には、買い物や調理を一緒に行うこともあります。基本的に1回当たり30~60分の訪問で、延長する場合は別途医師の指示が必要です。
地方にご家族がいる方でも、住み慣れた我が家が一番良いという思いで、おひとりでの生活を継続している方もいらっしゃいます。同居している場合、ご家族から「そばにいるのに何もしてあげられなくて辛い」という声を聞くことがあります。中には、ご家族だけで抱え込んでしまって、外に出られず引きこもってしまう場合があることも事実です。1人で悩まずにとにかく相談して欲しいです。私たちは、自分らしい生活を送るためのお手伝いをする「匠の技」を持っていますので、決して遠慮せず、抱え込まず、そして我慢せず何でもお話しください。
■もっと知りたい在宅医療 市民講演会を実施します!
在宅医療の普及啓発のため、10月に市民講演会を開催します。詳細は、本誌9月号に掲載予定です。