- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道伊達市
- 広報紙名 : 広報だて 2025年9月号
■懸念される太平洋沖巨大地震と津波
NPO法人環境防災総合政策研究機構
理事 宇井 忠英
平成23年に東北地方を襲った巨大地震と巨大津波は大きな被害をもたらしました。一方、この時得られた観測データから巨大地震が発生する仕組みの理解が深まり、日本列島での観測体制も向上しました。令和4年に配布された津波ハザードマップの改訂版にはその成果が反映されています。
市ホームページで公開中
※市公式LINEからも確認できます
北海道太平洋沖で巨大地震が発生し、太平洋沿岸の各地に津波が襲来する可能性が高まっているといわれています。今回のコラムでは「その根拠は何か」、「地震が発生した時どうするか」、「日頃からどう備えておくか」を解説します。
◇北海道太平洋沖巨大地震発生の可能性はどこまで判っている?
慶長16年(1611年)に大地震が発生して三陸沿岸や道東で溺死者が出たとの古文書の記載が見つかっています。道東の太平洋沿岸でボーリング調査をしたところ、直近で巨大津波が発生した1640年の駒ケ岳大噴火の火山灰層よりも数十年前に襲来したことが判り、古文書記録に相当すると判断されました。6千500年前の地層のボーリング試料からは、巨大津波が襲来した間隔は340-380年くらいと推定されました。既に慶長16年の大地震から410年余り経過しています。
広く普及しているスマホには今どこに居るかが判るGPS機能が搭載されています。スマホよりもずっと高精度な位置情報のGPS機器を国内全域に1千300点余り設置して日本列島の微細な変形を常時観測しているのが電子基準点です。市内では市立図書館のそばと大滝総合支所前にあります。
電子基準点の運用が始まり東北地方の太平洋沿岸で圧縮変形が顕著に捉えられていたところ、平成23年の東北地方太平洋沖地震が発生しました。
現在、この時と同様の変形が西日本の南海トラフに面した沿岸部と北海道の太平洋沿岸【図1】で進行中です。
このように地震や津波の被害を記載した古文書と津波堆積物の証拠や電子基準点での観測で北海道太平洋沿岸では近い将来、巨大地震と巨大津波に襲われる可能性が大きいと推測できるのです。
しかし、現在の技術では大災害をもたらす巨大地震が発生する日時とその規模を事前に特定することは不可能です。SNSや週刊誌に登場する予知報道はデマです。
◇日頃備えておくこと
津波ハザードマップを開いてみましょう。お手元になければ市公式LINEの「緊急・防災」タブや市ホームページで見たりダウンロードもできますし、市役所などで入手することもできます。
ハザードマップでは津波襲来のリスクがある場所に色が塗られています。何の建物か判るように拡大表示されているので、ご自宅のほか、職場・学校・お店や病院など普段出かける場所とそこに向かう経路が、津波リスクがある場所か確認できます。
リスクがある場所に居ることが分かったら、一時避難場所や津波避難ビルなどに向かうルートを確かめましょう。
ハザードマップに表示された危険範囲はシミュレーションの結果であり、あくまでも判断の目安です。実際に発生する津波はその範囲を超えてしまうこともありますので、より安全な場所へ避難してください。河川の中は建物などの障害物がなく、津波が遡りやすいので河川沿いは津波があふれ出すリスクがあります。
また、津波は何度も繰り返し襲来します。最初にやってきた津波が最大とは限りません。避難警報が発令されたら解除まで1日くらいかかる場合があります。長時間の避難に備えておやつや飲料水、携帯トイレ、防寒着を入れた非常持ち出し用のバックパックを備えておきましょう。
避難の必要がある範囲に居ることが分かったら、そこから避難場所まで歩いてみましょう。地震に伴って障害物が発生して避難経路が通れなくなってしまう可能性がありますので避難経路は複数試してみましょう。伊達市の沿岸部には巨大地震の発生から1時間ほどで最初の津波がやってきます。避難経路が大勢の人達で混雑していたり、天候が悪い時など避難先までたどり着くのは試してみた時よりも遅くなるでしょう。なるべく河川を避けて避難すること、河川に隣接した伊達西小学校では校庭や体育館の1階は避けて、2階に上がりましょう。津波避難ビルでは屋上まで上がりましょう。
お使いのスマホが緊急警報を自動受信できる設定になっているか確認してみてください。また「NHKニュース・防災」など災害情報を受信できるスマホアプリをインストールしておくと正しい情報をいつでもどこでも確認できます。
北海道太平洋沖巨大地震が発生した時に西胆振では震度4程度の揺れになると想定されています。
家屋の倒壊は発生しないと考えられますが、不安定な家具が倒れたり、飛び散ったりして緊急避難に支障を来す可能性がありますので、固定器具を取り付けましょう。
◇巨大地震が発生したらどう行動するか。
緊急地震速報を受信し、揺れ始めたら、とりあえずその場にとどまって身の安全を確保しましょう。巨大地震が発生した時には地震の揺れがなかなか収まらず1分を超えてしまうことがあります。
揺れが収まったら、スマホでNHKニュース・防災アプリを開き、下部の災害情報をクリックして地震情報を確認しましょう【図2】。
地図の北海道太平洋側のマークが最大震度6強や7であれば、津波が襲ってくる可能性がありますので、直ちに歩いて避難しましょう。その時には、ご近所に声掛けをして避難を促してください。
車の渋滞を避けるために健常者は歩いて避難することが必須です。一方、自力で避難できない要支援者は車での避難も許容されています。大事なペットも連れていきましょう。
巨大津波が北海道内各地を襲った時、伊達市で犠牲者がゼロになるかどうかは、市民の皆さんの日頃からの備えにかかっています。
※詳しくは本紙をご覧ください
問合せ:危機管理課危機管理係(市役所2階)
【電話】82-3162