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◆今月のテーマ 遺言と民法改正
遺品の中から「遺言書」が見つかった。本文はパソコンで、日付や署名は直筆で記載され、実印も押されていた。これは有効なのか…?
この遺言書は、現在の民法では「無効」になります。
遺言には、自筆証書遺言と秘密証書遺言、公正証書遺言の3つの種類があります。冒頭の「遺言書」は、自筆証書遺言にあたるところ、民法では、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならない。」(民法968条1項)と規定されているからです。
遺言の方式に関する規定は、平成11年と平成30年に若干修正がされたものの、実質的な内容は明治民法下から130年近く改正が行われていません。少子高齢化や所有者不明土地問題など、遺言制度を取り巻く社会情勢は変容しています。また、シニア世代でもスマートフォンをはじめとしたデジタル機器の保有率も高くなっており、日常生活において手書き以外で文書を作成する機会も増加しています。
そこで、法務省では、「自筆証書遺言制度のデジタル化」に向けた取り組みを行っています。具体的には、パソコンなどによる電磁的記録での全文などの作成のみならず、遺言者による全文などの口述を録音・録画などという方法も有効にすべきというものです。もっとも、遺言の真意性や作成された遺言の偽造・変造の防止をどのように図るかなど、課題は山積みであり、実現はまだ先のようです。

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