くらし しかりべつ湖

◆苔の森
日差しが照りつけ、じりじりと暑い日。やはり、何日かはこのような日がないと夏が来たと感じられません。四季のある国で生まれ育つと季節を肌で感じないと気が休まらないですね。
とはいえ、摂氏30度ともなると汗が滝のように出てきて登山などは苦行の様相を呈してきます。そのような時、然別湖には避暑をとれる場所、風穴があります。然別湖の南側、駒止湖周辺、天望山、白雲山、東ヌプカウシヌプリの山腹に点在しています。岩と岩の隙間から冷気が弱風で吹き出し、火照った身体にひと時の涼をもたらしてくれます。「生き返る」という言葉がしっくりくる程に気分転換ができ、また元気よく歩を進めることができます。
風穴のある場所は辺りもひんやりとしていて、岩の上にはびっしりと苔が覆っています。風穴の周囲は冷風で空気が冷やされ湿っぽくなっているため、苔が生活しやすい環境です。この苔ですがじっくり観察すると狭い範囲だけ見ても実に多くの種類の苔が生えているのが分かり、面白い世界が広がっています。葉の部分の形がダチョウの羽根のような形をしている苔、杉の葉に似ている苔と姿や形がさまざまで小さな木のような姿の苔もあります。また、胞子を飛ばす蒴という器官が、細い柄からまん丸のやとんがり帽子を被ったようなものなど形がユニークで繊細でもあり、なんとも可愛らしいのです。標高ごとに苔の種類も変化があり、登山をしながら観察するのもお勧めです。とても小さな世界なのでルーペを使うと観察しやすいでしょう。苔というと緑色のものが多いですが、白いの赤いの、黄緑、濃い緑とカラフルで目を楽しませてくれます。がれ場などではこの苔たちとエゾナキウサギやエゾシマリスの組み合わせが実に長閑な景色です。長い年月をかけて成長した苔は厚みもあり、雨上がりの時には手で軽く触れると触り心地は最高級のマットみたいにふわふわです。風穴が育む苔の世界、風穴の近くで休憩しながら、目線を落とし、苔を観察することをお勧めします。

写真・文:然別湖ネイチャーセンター
【URL】https://www.nature-center.jp