- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道浦幌町
- 広報紙名 : 広報URAHORO 令和7年9月号
■連載172
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝
今年の夏も早、過ぎ去ろうとしています。夏を惜しむ気持ちと、実りの秋を迎えたい気持ちが交錯する時期とも言えましょう。ともあれ、季節の変わり目は健康に要注意。
さて、管理職という言葉からどのようなことが思い浮かぶでしょうか。私は自身のささやかな経験から、まず「責任」や「指導・支援」が脳裏をよぎります。管理職になってみたことで感じた「管理職」という仕事への印象について、(株)日本能率協会マネジメントセンターの資料(n=1072)を紹介しましょう。「とてもそう思う」「そう思う」「ややそう思う」の合計で見るならば、「自分の成長につながった」80・2パーセントで最も高い数値でした。「会社からの期待を感じる」74・2パーセント、「会社の方針によりコミットするようになった」74・2パーセントが、それぞれ2位、3位でした。次に、「調整が多くて面倒」73・4パーセント、「業務量や業務時間の負荷が高い」72・2パーセントと、否定的印象が続きます。けれどもその後に、「大きな仕事に挑戦するやりがいを感じる」72・2パーセント、「部下の成長支援が面白い」72・1パーセントと、再び肯定的印象が表れます(「管理職の実態に関するアンケート調査」(2023年4月))。
言い換えれば、会社のため、部下のため、加えて自身のために、管理職を経験した方が良いとも言えるのではないでしょうか。もちろん能力的にあるいは人間的に管理職に決して相応しくない人物を、私は数多く見てきましたが、あくまでも私見ながら、大切なことは、職位・職階は与えられるものであって、上昇志向を持って自ら取りにいかないことです。与えられれば、謹んで拝命して職責を果たすことが仕事人の矜持でしょう。「受け身の野心」に沿った出世はした方が良いと思うのです。皆さんは如何お考えでしょうか。
けれども、管理職候補の中堅社員の育成に関する企業の課題は、山積しています。東京商工会議所の調査(n=377)によれば、「管理職になることを希望する中堅社員が少ない、以前よりも減った」34・5パーセント、「上長の育成力・指導意欲が不足している」32・1パーセント、「管理職候補になる人材が育っていない・対象者がいない」29・7パーセントが、上位3位までです(「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員・中堅社員に対する意識調査集計結果」(2025年4月))。管理職を目指す層が薄くなってきているとともに、現在の管理職の能力・意欲が低下しているという、極めて深刻な状況であると言っても過言ではありません。昨今の人手不足を背景にした売り手市場ならば、「数合わせの論理」が優先されるかも知れません。
最近の若者は、出世したいと思わない理由(n=455)として、「責任が増える」33・2パーセント、「ストレスを抱えたくない」32・7パーセント、「自分には向いていない」30・8パーセント、「プライベートな時間が減る」29・5パーセント、「プレッシャーが重い」27・0パーセントが、上位を占めました(ソニー生命保険(株)「社会人1年目と2年目の意識調査2025」(2025年4月))。誤解を恐れずにあえて言うならば、20代は耐性がかつてより弱く、仕事よりも余暇の中に生きがいを求める傾向が強いのではないでしょうか。若者の職業観は人生観・価値観とともに変貌しています。
日本型組織では、ミドル最強説は未だ崩壊していないのでは。ならば、現在の管理職が若手社員・職員に、管理職の魅力を創り出して伝える役割を意識して実践すべきでしょうね。
▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。