くらし 〔特集〕せんまやひなまつりの歩き方~一関の春はせんまやからやってくる(2)

■まつりを支える人たち
まちを挙げてのまつりは、まちを思う住民たちの協力でつくられています。

●「千厩を盛り上げたい」を持ち寄り、大きな力へ
一関の春の風物詩として定着したせんまやひなまつり。運営の中心を担うのは、千厩酒のくら交流施設の清掃活動や観光ガイドを行う蔵サポーターの会をはじめ、地元の商工団体である一関商工会議所女性会千厩支部、せんまや逸品の会などに所属する女性たちです。
各会場に所狭しと飾られるのは、明治、大正時代から各家庭で受け継がれてきた段飾り、竹ひごから赤い糸でつるすつるし飾り、縁起物や動物などをかたどった布小物、全国の手芸愛好家による作品などさまざま。寄付で集まった昭和、平成生まれの人形も多くあります。膨大な量を作ったり飾ったりするため、男性たちの手も借りながら準備を進めます。
「どうやったら良い飾りができるかなといつも考えている」と笑みを浮かべるのは、蔵サポーターの会副会長の金野幸子(ゆきこ)さん(83)。「年配になってくると、こうしてみんなで自由に集まれる場所があることが大事。家にいるよりも手や頭を使ったり、おしゃべりしたりしてコミュニケーションを取ることが生きがいになっている」と、仲間と力を合わせる喜びを感じています。
まつりの継続には若い世代の協力が欠かせません。
期間中、盛り上げに一役買っているのが千厩高校。箏曲部、音楽部、吹奏楽部は演奏ステージ、茶道部はお点前披露、生産技術科は丹精込めて育てた花卉(かき)を販売し、集客に貢献しています。
箏曲部にとって、まつり会場で演奏するのは稽古の成果を披露する貴重な機会。小さな頃からまつりに親しんでいたという同部の佐野悠希(ゆうき)部長(2年)は「日本らしい会場の雰囲気が箏にもぴったりで、観客と近い距離で演奏するのは新鮮だし反応が感じられてうれしい。地域にある学校としてまつりに関わることで、地元の良さを再認識できる」と目を輝かせます。
世代を超え、地域のつながりが醸成した「おもてなしの心」は、県内有数のひなまつりをさらに進化・発展させています。

○「楽しみたい、楽しませたい。それが地域を活気づける」
千厩ひなまつり実行委員長 昆野洋子(ようこ)さん(82)
地元の女性たちで平成17年に結成した蔵サポーターの会が、歴史ある蔵の活用を考える中で、前身となるひなまつりを始めました。当初は会員が三つか四つのひな壇と手作り人形を持ち寄ってささやかに楽しんでいましたが、賛同してくれる商工女性部と一緒に開催するようになり規模も大きくなりました。また、商店街の店舗を回ってもらうためにスタンプラリーも始めました。各団体と共に実行委員会をつくって回を重ね、ありがたいことに年々来場者数は増えています。
準備は、考える、作る、飾るなど、それぞれが得意分野を生かしながら進めます。ディスプレーはこうしよう、ジャンボひな壇を飾ろうなど、見に来てくれる人に楽しんでもらうためのアイデアが止めどなくあふれてきます。全国各地にひなまつりはありますが、私たちは一歩先を走っていると自負しています。
蔵から始まったひなまつりは、千厩を挙げた地域活性化イベントへと進化しました。昨年は千厩町外からの出展もあり、本年は市内全地域が出展協力してくれて、目指してきた「点から線へ、線から面へ」という取り組みの広がりを実感しています。でも、根底にある「自分たちのできる範囲で楽しみながら」というモットーは揺るぎません。そこに若い人たちや他地域の人たちが新しいエネルギーを吹き込んでくれることで、まちづくりはさらに広がるものだと思います。

問合せ:千厩ひなまつり実行委員会(一関商工会議所千厩支所内)
【電話】53-2735