くらし 住田町農林業振興資金貸付金返還請求訴訟について~訴訟提起から和解成立に至るまで~

町が三陸木材高次加工協同組合と協同組合さんりくランバーに貸し付けた、町農林業振興資金貸付金の返還を求めた訴訟について、3月19日に和解が成立しました。
ここでは、訴訟提起から和解成立に至る経過を、5月1日から9日までに行われた住民説明会でいただいたご意見と併せて詳しくお伝えします。

■訴訟の提起と経過
町では、三陸木材高次加工協同組合と協同組合さんりくランバーに対し、経営再建のため平成18年から平成20年の間に合計6件、総額7億9千万円を貸し付けました。貸し付け後は、両事業体ともに黒字を計上していましたが、平成26年度から厳しい経営状況になり、貸付金の返済が滞る状況となりました。
そこで町は、法的手段による債権整理を図るため、平成29年11月、両事業体や連帯保証人などを相手方として、調停申し立てを行いましたが、不成立で終結しました。
しかし、令和2年7月、両事業体の破産手続きが開始決定されたため、同年10月、貸付金の連帯保証人とその相続人を相手方として、貸付残金約7億6800万円、利息約600万円、遅延損害金約2億7700万円の合計約10億5140万円の支払いを求める訴えを起こしました。
訴訟提起後、令和3年1月に第1回目の口頭弁論が行われて以降、令和7年3月の和解成立まで合計33回の審理が行われました。この間に、2人の連帯保証人が死去したほか、相続人6人が相続放棄により訴えの相手方から外れました。また、両事業体の破産手続きが終了したほか、連帯保証人3人と相続人1人が訴訟から離脱し自己破産の申し立てを行い、合計4670万3539円が町に配当されました。

■訴訟の内容
町側の保証債務履行請求に対して、被告側は次の事情や主張により請求原因事実を争ってきました。

〔被告側が訴える前提事情〕
(1)農林業振興資金貸付金の貸し付け時において、両事業体の経営はすでに破綻状態にあった。
(2)町と両事業体は密接な関係にあり、町が実質的に事業体の経営を主導し、被告らは経営に関与していなかった。
〔被告側の主張〕
(1)6回にわたる保証契約のいずれも、要求される書面性の要件を満たしていないことから、保証契約は無効である。
(2)6回にわたる保証契約のいずれも、被告に動機の錯誤があったことから、保証契約は無効である。
(3)保証契約の締結にあたり、町は、被告に対し、生じるリスクなどを含め、しかるべき説明を行わなかったことから、保証契約を解除できる。
(4)被告に責任を転嫁し、過大な債務保証を負わせることは正義に反する。
これらの主張に対し、町は理事会の議事録など根拠資料を提示しながら、「理事は、連帯保証人が保証責任を負うことを明確に理解した上で借用証書に署名捺印していること」、「理事が経営状況を把握していないことは通常あり得ないこと」などについて主張・反論し、正当な手続きや書類により保証契約が交わされたことや、手続きにおいて瑕か疵しや違法性がないことを訴えてきました。

■和解に向けた動き
令和5年3月、被告側から訴訟上の和解の可能性について言及がありました。その後、、裁判所が主導し、訴訟上の和解に関する協議が継続的に行われてきました。
町は、訴訟上の和解に応じる条件として、次のことを求めました。

〔町の求め〕
(1)請求額全額について、被告側に支払義務があることを認めること。
(2)農林業振興資金貸付金に関する6回の貸付手続きについて、町側に瑕疵(かし)や違法性がなかったことを被告側も認めること。
(3)各被告が、自己破産申立を行う場合と同様の資料を開示・提供し、仮に、現時点で破産手続きが開始された場合における原告に対する配当見込額を基準とした和解金額とすること。
町では、これらの条件を被告が認めることを前提に、「判決」と「和解」の2通りの訴訟結果について、より多くの債権が回収できる方法は何か、早期に解決できる方法は何か、という観点により、代理人弁護士とともに、検討を進めました。(下表参考)
その結果、相手方との合意に基づいた金額が確実に回収できること、本件を早期に解決できるとの判断から町は和解を選択しました。
令和7年3月10日、裁判所から提示された和解条項の内容を町議会で審議し、和解の締結に関し、議決がされました。その後、原告、被告双方が合意し、同年3月19日に和解が成立しました。

■和解の内容
和解の主な内容は次のとおりです。
(1)和解の相手方は、それぞれの保証契約について、保証債務履行義務があることを認める。
(2)和解の相手方は、町が行った農林業振興資金の貸し付けや保証契約の手続きについて、瑕疵(かし)や違法性がないことを認める。
(3)和解金額として、和解の相手方計12人で総額1億8948万円を町に支払う。
(4)遅滞なく和解金の支払いがされた場合には、町は和解の相手方に対し、そのほかの支払い残額を免除する。
※和解金は、令和7年3月28日に入金されました。

なお、配当金4670万3539円に、和解金1億8948万円を加えた合計2億3618万3539円が回収額となりました。

表 「判決」と「和解」の訴訟結果のポイント

■神田町長より町民の皆さまへ
本件については、裁判所からの意見を受け、債権回収の可能性や事件の早期解決の観点から、和解を選択しましたが、全額回収に至らなかった点は、誠に遺憾に思っております。
今回のことによる、今後実施する町の各種事業への影響はありませんが、今後は、同様の事態を防ぐため、債権管理やリスク管理などの意識強化を図り、より健全な行政運営に努めてまいりますので、ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

■和解金額の考え方
総資産額-居住用不動産評価額-負債総額-99万円(※)
※破産手続きでは、現金を99万円まで手元に残すことが法律で決められている。

■住民説明会でいただいたさまざまなご意見
・二度と同じことが起きないように努力してほしい。
・全額回収を求める方もいるとは思うが、回収できる分を回収したので、良かったと思う。
・貸した金額からすると少ないが、一般的な回収額からすると大きな金額が回収できている。
・解決までもう少し長くかかると思っていたが、和解で終結して安心した。
・町の財政運営に影響はないのか。
・和解したのは良いと思うが、皆で蓄えた税金なので、しっかり計画を立てて先を見据えて取り組んでほしい。

問合せ:林政課
【電話】46-3868