くらし 3・11震災文庫を読む 82

東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。

◆震災後の「ニュース」を作り手として考える
TOHOKU(トウホク)360 編集長 安藤 歩美

◇「ニュース空間の社会学―不安と危機をめぐる現代メディア論」
伊藤守・岡井崇之/編 世界思想社 刊
私たちの漠然とした不安は、実は「ニュース」がもたらしているのかもしれない―。マスメディアやSNSが「不安」をどのように生み出し、またそれを解消していくのか。本書では、東日本大震災後のニュースでの政治家の失言や電力危機を訴える報道がどのようなプロセスで生産され伝わったのかをたどり、現代の「不安」の正体の一端を明らかにしようとします。
SNSを含むメディアに自分の感情をコントロールされていないか?またメディア人として、その片棒を担いではいないだろうか?学術書ではありますが、そんなことを振り返り意識する入り口になる本です。

◇「市民が育む持続可能な地域づくり―地域メディアの役割と文化拠点としてのミュージアム」
松本恭幸/編 同時代社 刊
全国の多様なメディアやミュージアムの実践を記し、地域での意義や役割を描く本です。東日本大震災関連では震災伝承施設やアーカイブの活用、津波被災地間の国際交流活動などが取り上げられ、単なる災害の記録にとどまらない、生きた伝承活動の取り組みを知ることができます。
私が2016年から東北で始動した住民参加型のニュースサイト「TOHOKU360」についても寄稿しており、「誰もがニュースを書ける」新しい報道の仕組みをどのように生み出し、住民の皆さんとニュースを発信してきたのか、その実践と課題を伝えています。

紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます

問合せ:市民図書館
【電話】261・1585