くらし おしえて博物館-七十二-

『海をわたる木の実』

もうすぐ夏がやってきますね。夏といえば海、ということで、海で見られる変わった木の実のお話をしたいと思います。
海岸には波の運搬作用でさまざまな物が流れ着きます。付近の河川から流されてきたものや海岸で捨てられたものなどが多いのですが、なかには海流によってはるか遠くの国や地域から運ばれてくるものがあります。そのなかには植物の木の実やタネも見られます。
植物は動物のように自分の意思で動くことはできませんが、そのかわりに、自分以外のものの力を使ってタネを運ばせることがよくあります。例えばタンポポは綿毛のついたタネを風に乗せて遠くに運ばせ、子孫を遠くに広げます。他にも代表的なものとして、水の流れに乗って移動する「水散布型(みずさんぷがた)」と呼ばれる方法があります。特に海流によって運ばれる植物の種子を「海流散布種子」と呼びます。
福島県の沖合は南方からの黒潮と北方からの親潮が出会う場所となっていますが、相馬地方の海岸でもココヤシやゴバンノアシといった熱帯の植物の木の実が見つかっており、黒潮に乗って南方から運ばれてきたものと思われます。これらの植物は熱帯アジアのほか、日本では沖縄の南部の八重山(やえやま)諸島などに生育していますが、直線距離にして2千キロメートル以上離れています。この距離を「どんぶらこ、どんぶらこ」と移動してきたのかと思うと少し面白いですが、海流のダイナミックさと植物の分布拡大戦略のたくましさを感じさせる例です。
これからの暑い季節、早朝や夕方にお散歩で海岸を訪れる方もおられるかと思いますが、その時にはぜひ波打ち際を観察してみてください。意外な発見があるかもしれませんよ。

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