くらし 特集 地域を支える絆(1)

民生委員・児童委員は、地域の皆さんが安心して暮らせるよう、生活上の困りごとや心配ごとに関する相談に応じたり、必要な支援を受けられるよう、地域の専門機関につないだりするなどの活動を行っています。
また、民生委員・児童委員の中には、いじめや不登校問題などの相談や、児童虐待の早期発見・対応など、地域のこどもたちの問題を専門に担当する「主任児童委員」もいます。いずれの方も、地域を支えてくれる、なくてはならない存在です。
市内で活動する3名の民生委員・児童委員に密着し、活動内容や、心がけていることなどについて伺いました。

■地域を見回りささいな変化に気付く―
笹島 隆治さん
笹島隆治さんは、地域の皆さんと植栽のボランティア活動をしたり、ゴスペルをしたりするなどしていきいきと生活しています。
そんな笹島さんが民生委員を始めたのは、前任者の後任として、地域の人から推薦されたことがきっかけです。地域の人たちとの交流が深く、誰にでも親しく接することができる笹島さんは、持ち前の明るさで、地域のために10年以上活動しています。
これまでの活動をとおして感じたことは、地域の皆さんの様子を、普段からよく見ておくことが大切だということ。常に顔の見える関係を築いておくことで、相手のささいな変化に気づくことができるのです。
笹島さんが自転車で地域内を見回っていると、「こんにちは。元気ですか」と地域の人たちが声をかけてきます。「生まれも育ちもこの地域なので、みんな私のことをよく知っているんですよ」と笹島さんは笑顔を見せます。
 
定期的に笹島さんが訪問しているAさんは、「笹島さんが来てくれることもうれしいですが、元気に歩いている笹島さんの姿を見かけるだけでも元気をもらうことができます。また、そこで目が合うと気さくに声をかけてくれて、ついついおしゃべりをしてしまうんですよ」と話します。

定期的に訪問するだけでなく、日ごろから地域内を見回って、地域の皆さんが元気でいるか、何か困ったことはないかなど、一人一人の様子を確認することを大切にしている笹島さん。「地域の皆さんが元気でいられることが一番うれしい。そのために、小さなことでも自分のできることを精一杯やっていきたいです」と力強く話します。

元気がモットーの笹島さん。その元気がみんなを笑顔にし、地域の絆を深める力になっています。

◇とても安心して暮らせるようになりました
現在一人で暮らしており、体調も悪く病院通いが続いています。
これからの生活に不安を感じていたものの、近くに気軽に話せる人はいませんでした。そんな時に、民生委員の存在を知り、どのような相談ができるか知りたく、市に連絡して紹介してもらいました。
はじめは、どんな人か分からず不安でしたが、紹介された笹島さんは、会ってみると、とても気さくな人柄で安心しました。今も定期的に訪問してくれて、雑談に付き合ってくれたり、困っているときには相談に乗ってくれたりしています。笹島さんに来てもらうようになってから、とても安心して暮らせるようになりました。(70代男性)

■ともに支え合うことの大切さをかみしめて―
天谷 久さん
この日、天谷久さんは、民生委員活動として、Bさんの自宅を訪れました。
「お変わりないですか」「大丈夫ですよ。ありがとう」―何気ない会話の中に温もりが感じられるのは、二人が旧知の仲であることも関係しているのでしょう。
天谷さんが民生委員として、Bさんと関わるようになったのは3年前からですが、以前から知り合いだったこともあり、今までの関係と特に変わりはありません。
こどもの時からお互いを知っている間柄だから、ずっと元気でいてくれるとうれしいと目を細める天谷さんを見て、Bさんも自然と笑顔になり、二人は楽しく話し込んでいました。
 
地域内の高齢者の自宅を訪問し、元気でいるか、なにか困ったことがないかなど、雑談を交えながら確認をするようにしている天谷さんには、印象に残っているエピソードがあると言います。
以前、担当していたCさんの体調が悪くなり、自力での生活が困難になってきていたことから、介護サービスを受けることを提案しましたが、ヘルパーさんに頼るなんて恥ずかしいと断られてしまいました。しかし、このままでは在宅生活を続けることができなくなると考えた天谷さんは、高齢者支援センターに相談します。そして、一緒にCさんを訪れ、住み慣れた地域で暮らしていくためには、自分一人の力だけでなく、周りの人たちに協力してもらうことも大切だと説得し、Cさんは、デイサービスを利用することになりました。
すると後日、Cさんから「紹介してもらったデイサービス、利用してみたらすごく良くて助かっています」と感謝されました。そして、サービスを利用する頻度も増やしていったそうです。

「地域の皆さんに感謝されると、自分も力をもらえる」と話す天谷さん。「支える側」と「支えられる側」という関係を超え、ともに支え合うことの大切さをかみしめながら、これからも活動を続けていきます。

■積み重ねてきた経験と知識を生かして―
奥田 俊裕さん
奥田俊裕さんは、民生委員を20年以上続ける大ベテラン。祖父の代から三代にわたって、民生委員として活動しています。
この日訪れたのは、中央高齢者支援センターが主催する、地域住民の医療やケアについて考える「地域ケア個別会議」。ケアマネジャーや訪問診療の医師など、その地域で働く専門家が集まり、事例を紹介しながら、ケアの方向性を考えます。
年齢や性別、抱えている疾患などから、現在困っていることについてどのような支援ができるか考えます。医師や薬剤師から専門的なアドバイスが多く飛び交う中、奥田さんも、地域住民と交流をしてきた経験を生かし、質問をしたり、意見を述べたりしていました。
「民生委員として、多くの地域の皆さんと関わってきました。地域に一番近い存在として活動してきたからこそ、地域の実情や、住民一人一人のニーズが分かります。積み重ねてきた経験と知識を生かして、これからも地域の皆さんに寄り添っていきたいです」と話す奥田さん。
地域住民を支えるため、関係機関との連携を図りながら、「住民にとって必要なことは何なのか」を探し続けます。

◇いてくれることで成り立っています
地域ケアは、専門家からの意見だけでなく、地域の方々の感覚に寄り添って進めて行くことが大切です。そのため、民生委員の方からいただく意見は非常に貴重です。
高齢者支援センターは、市内8か所に設置され、担当する中学校区に住む高齢者のために、支援活動などを行っています。しかし、新たに着任した職員が高齢者を訪問しても、はじめは職員とわからず、怪しまれたり、警戒されたりすることがあります。そのような状況でも、民生委員の方と一緒に訪問することで、安心して心を開いてくれます。民生委員の方がいてくれることで、私たちの活動が成り立っています。
中央高齢者支援センター 野口 久美さん

問合せ:福祉総務課
【電話】232-9169