- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県常陸大宮市
- 広報紙名 : 広報常陸大宮 2025年1月号
◆西の内紙の伝統を受け継ぐ人々
◇五介和紙 菊池 浩さん
山方地区に店を構える「五介和紙」。その4代目を務めるのが、菊池浩さんです。紙すきは浩さんを含め2人で担当し、乾燥作業担当1人と合わせて3人で、西の内紙づくりを行っています。
・伝統をつなぐため 父のもとで修行を重ねる
浩さんは、高校卒業後、五介和紙の3代目である、父に弟子入りしました。「家族代々、和紙作りを家業としていたので、自分が4代目として継ぐことは自然な流れでした」と浩さん。父のもとで修行を重ね、販売できる品質の西の内紙を安定して作れるようになるまで10年かかったといいます。「特に、紙の厚みを目や重さでわかるようになるまで時間がかかりました。紙を1枚1枚すく度に、父に確認してもらいながら、感覚を身につけていきました」と話します。
・「均一な粘度」が紙すきのポイント
紙作りの工程の中でも、特に重要なのは、原料の粘度だと浩さんは言います。粘度が高いと、厚みの調整が難しく、逆に粘度が低いと、その後、脱水や乾燥の工程を行うタイミングで、1枚ずつはがれにくくなってしまいます。紙すきに適した原料の粘度調整も、長年の経験から身につけた職人の技です。
・「未来に技術を繋ぎたい」
浩さんは、この先やりたいこととして、西の内紙づくりの技術の伝承を挙げ、「もし、技術を継いでいきたいという方がいたら、教えたいと思っています」と、今後も代々続いてきた技術を未来へとつないでいきたい思いを話してくれました。
○五介和紙
住所:常陸大宮市山方1323
電話:【電話】0295-57-6647
営業時間:9:00〜17:00
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
五介和紙では、商品販売のほか、西の内版(33cm×48cm)の大きさの和紙を作る体験もできます。
◇紙のさと 菊池 大輔さん
舟生地区にある「紙のさと」の店主の菊池大輔さん。岐阜県から移住した曽祖父がはじめた紙すきは大輔さんで4代目で、現在は、大輔さんご夫婦2人で紙作りを行っています。
・楮の収穫、加工、紙すきと多忙な冬季
紙のさとでは、自分たちで育てた楮を使い、商品を作っています。楮の収穫を2月に行い、4月までは、昼間の紙すき作業後、白皮にする作業を行うといいます。
また、粘剤に適した水の温度になる冬にしか作ることのできない紙もあり、冬場は紙すき職人の繁忙期になるといいます。
・依頼者の要望に合わせ試行錯誤を重ねる
手ですく和紙は、数量や厚みなどの要望に細かく応えられるのが特徴の1つで、全国から、多種多様な注文が入るといいます。糸に加工するための和紙作りでは、糸を紡ぎやすいよう、繊維が縦に並ぶように紙をすきます。また、「茨城県民手帳」のカバーになる西の内紙のデザインも毎年、発行元と相談して、試行錯誤を重ねています。「令和7年の手帳は、コキアのイメージと要望があり、色と、かすかな凹凸(おうとつ)でコキアを表現しました」と話してくれました。
・「自分の商品を良いと思ってくれる人を大切に」
今後も、依頼者の要望に合わせ、試行錯誤を重ねながら、お互いに良いと思える紙を作っていきたいという大輔さん。「自分のすいた紙を気に入っている人や、大切に使ってくれる人に寄り添いたい」と依頼者への真摯な気持ちを話してくれました。
○紙のさと
住所:常陸大宮市舟生90
電話:【電話】0295-57-2252
営業時間:9:00~17:30
定休日:水・木曜日(祝日の場合は営業)、年末年始
紙のさとでは、商品販売のほか、色をつけた繊維を和紙の上に乗せて絵を作る「すき絵」の体験ができます。