くらし なめがた大使小林光恵さん書きおろしエッセイ 五感でキャッチ!なめがた漫遊記 第11回

■愚問
デーブ大久保さん似の男性が、道の駅たまつくり「こいこい」のデッキのテーブル席にひとりで座っていた。
彼は、晴れた午後の霞ケ浦に遠い目を向けながら小さくない音量で――「威風堂々」のメロディーだとわかるくらいの――鼻歌を歌っていた。素足にサンダル履きで、何かちょっとした買い物をしたらしい小さなレジ袋を持っていた。となりのテーブルに座っていた私は、地元の方かな、と思い、彼に一つ質問をしてみたくなった。しかし、案外内気なためそれができないでいると、彼が私に顔を向けて言った。
「どっから来たの?」
まさかの展開に驚いた私は目を丸くして絶句。すると彼はニコリとして、
「そんなビックリしなくてもいいでしょうよ。オレに話しかけたそうな顔してっから、言ってみたんだから」
「あっ、ありがとうございます。よくわかりましたね。あの、行方市の方たちは、カラオケをやりたくなったとき、どちらに行くのでしょうか?」
玉造在住の親友から前に「行方市にはカラオケをやるところはない」と聞いたことがあり、その後ネット検索してカラオケのできるスナック二軒くらいあるものの、カラオケボックスやルームはないと知り、「どのへんまで出てやるのだろうか」という素朴な疑問を持っていたのだった。
彼は、何も言わずに顔を霞ケ浦方向に戻すと、「田んぼから聞こえてくるカエルの合唱もいいもんだなあ。ケロケロもいいし、ゲロゲーロも」と独りごちながら立ち上がり、私のほうを向いて人なつこい笑顔になって「愚問かな」と言って、その場をあとにした。
どういう点で愚問だったのか――。
スーパーの移動販売のように、カラオケルームの移動営業もよいのではないだろうか、などとともに理由をあれこれ考え中です。

■小林光恵さん
行方市出身。つくば市二の宮在住。
行方市のスーパー移動販売の品ぞろえに、生花も入っていたならうれしい方、多いのではないかしら。どうでしょう。

市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。