- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県行方市
- 広報紙名 : 市報なめがた No.236(令和7年4月号)
行方市のゼロカーボンへの取り組み
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
■1.『行方市ゼロカーボンシティ宣言』
気候変動対策へのゼロカーボン・脱炭素に向けた地域の役割が重視される中で、行方市は2024年3月に「行方市ゼロカーボンシティ宣言」をしました。同宣言では、気候変動を「人類の生存基盤を根本から揺るがす『気候危機』」ととらえ、国連気候変動パネル(IPCC)そして日本国政府が提唱する、2050年までに二酸化炭素の実質排出量をゼロにする取り組みを、地域から加速化する必要性を訴えています。
行方市は、気候変動の取り組みへの施策として、2022年に「行方市環境基本計画」および「行方市地域気候変動適応計画」、2023年に「行方市地球温暖化対策実行計画(事務事業編)」、2024年に「行方市再生可能エネルギービジョン」(以下、「ビジョン」)および「行方市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)」を策定しています。
■2.行方市の再生可能エネルギーポテンシャル
すでに本連載でご紹介の通り、気候変動対策の大きなカギになるのは、二酸化炭素の排出を抑える脱炭素に向けた、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換になります。ここでは「ビジョン」(2024)の概要を紹介していきましょう。
行方市の「自治体情報カルテ」によりますと、区域の電気使用量は年間約20万MWhとされています。これに対して、太陽光発電導入のポテンシャルは、年間約227万Whとされており、太陽光発電だけで地域の電力需要を十分賄える潜在能力があることになります。加えて、太陽熱や地中熱の熱エネルギー、そして木質バイオマス(化石資源を除く、再生可能な生物由来の有機性資源)の活用も、地域の再生可能エネルギーのポテンシャルとしてあげられています。こうしたポテンシャルを生かしていくには「将来にわたって持続可能なエネルギー利用ができる『まちづくり』を目指すことが重要」とされています。
■3.再生可能エネルギーの実現に向けてポテンシャルから導かれた施策
行方市の再生可能エネルギーの高いポテンシャルを実現させるため「ビジョン」(2024)では、次の施策が提示されています。
第一に、カーボンニュートラルと地域振興の同時解決として、次のビジョンが示されています。すなわち、(1)マイクログリッド(小規模発電等によるエネルギーの地産地消)およびスマートグリッド(IT等による効率的なエネルギーの需給)の導入、(2)電気自動車(EV)から水素を見据えた導入があげられています。
第二に、防災強靭化(きょうじんか)(レジリエンス)として、次のビジョンが示されています。すなわち、(1)庁舎への太陽光発電の導入、(2)麻生・北浦・玉造地区の公民館、体育施設への太陽光発電の導入、そして(3)庁舎駐車場へのソーラーカーポート(屋根にソーラーパネルを設置してEVの保護と充電を行うことができる)の設置があげられています。
そして第三に、地域循環経済における未利用資源(ごみ・廃棄物・バイオマス)の活用として、次のビジョンが示されています。すなわち、(1)環境美化センターの排熱利用、(2)廃プラスチックの熱分解油化装置の導入、そして(3)もみ殻や稲わらなどの稲作廃棄物の有効活用があげられています。
※図は本紙をご参照ください。