文化 シリーズまち・ひと・しごと #72

■生誕150周年 利根町ゆかりの偉人 柳田國男(やなぎたくにお)
今年で生誕150周年となる柳田國男。利根町は、「柳田國男第二の故郷」と呼ばれていますが、どのような関わりがあったのでしょうか。今回のシリーズまち・ひと・しごとは、「日本民俗学の父」と呼ばれる柳田國男についてご紹介します。

▽柳田國男ってどんな人?
柳田國男は、明治8年に、現在の兵庫県神崎郡福崎町で、松岡家の六男として生まれ、幼いころから地域文化への強い関心と非凡な記憶力を持っていたとされ、わずか10歳で高等小学校を卒業、11歳の時に預けられた三木家では、その膨大な蔵書を読破したといわれています。
東京帝国大学で法学を学んだのち、農商務省や内務省で官僚として働きながら、日本各地に伝わる昔話や伝承、村人の生活などを記録し続けました。
明治43年に出版された代表作「遠野物語」は、岩手県遠野地方にまつわる逸話や伝承などの不思議な説話をまとめたもので、文学作品としても高い評価を受けています。
その後も、雑誌「郷土研究」の発行や各地の研究者と交流し、「民俗学」という学問を日本に広めていきました。

▽利根町で過ごした3年間
國男は12歳の時、布川村(現在の利根町布川)にある小川家の敷地内の離れで医院を開業していた兄の鼎(かなえ)に呼ばれ、3年間を利根町で過ごしています。後に國男は、この布川時代のことを思い出して、「素っ裸で棒切れをもってそこら中を飛び回り」、「帰って来るとやたらに本を読んでいた」と回顧(かいこ)しており、布川での生活が、さまざまな知見や知識、発想力を得る大きなきっかけとなりました。
また、徳満寺の地蔵堂に掛けてあった「間引き絵馬」を見て、「子供心に理解し、寒いような心になった」と述べており、の時の経験が、飢饉(ききん)の絶滅のために、農商務省に入省する動機となりました。
多感な少年期を町で過ごしたことが、後に「日本民俗学の父」と呼ばれることとなる國男の将来に大きな影響を与えたことから、利根町は「柳田國男第二の故郷」と呼ばれているのです。

■土蔵や母屋が残る柳田國男記念公苑
「柳田國男記念公苑」は、國男が少年時代を過ごした旧小川邸を再現した施設です。
敷地内には、母屋と土蔵、そして美しい日本庭園があり、母屋は、町民交流のために開放され、茶道や琴のサークル活動などで利用されているほか、スポーツ少年団の合宿などで宿泊することもできます。
母屋の奥には、國男少年が本を読み漁った土蔵が当時のまま残されており、現在は資料館となっています。館内には、柳田國男に関する著作物や文書など、貴重な資料が多数展示されており、彼の功績を辿ることができます。また、土蔵の隣には、國男少年が神秘体験をしたという祠もそのまま残っています。

■あの芥川龍之介も読んだ!!
柳田國男の代表作「遠野物語」
「遠野物語」は、岩手県遠野地方に伝わる天狗や河童、神隠しなどの不思議な話や怪談話が119話収録されている説話集です。その独特の世界観は、発表当時から文学者たちにも大きな影響を与え、島崎藤村(しまざきとうそん)や泉鏡花(いずみきょうか)なども愛読したと伝えられています。なかでも芥川龍之介は、親友の手紙で「此頃、柳田國男氏の遠野物語と云ふをよみ大へん面白く感じ候」と書くほどでした。興味のある方は、利根町図書館に「柳田國男と民俗コーナー」が設置されていますので、ぜひ読んでみてください。

■小川家祠で神秘体験をした「不思議な玉」
小川家には屋敷の奥に屋敷神を祀った祠がありました。祠には小さな石の扉がはまっており、気になった國男が、誰もいない時を見計らい恐る恐る開けてみました。予想もしていなかった綺麗な蝋石(ろうせき)の玉が収まっており、驚いた國男は、興奮のあまり気が遠くなってしまいました。良く晴れた青い空を見上げると、昼間にも関わらず数十の星が見えました。その時突然、ピーっとヒヨドリが鳴き我に返った。というエピソードがあります。
現在この玉の現物は歴史民俗資料館で見ることができるほか、レプリカが記念公苑の土蔵に展示されています。

■柳田國男略年表
明治
8年 7月31日誕生
18年 三木家に預けられる
20年 布川に移住
21年 小川家土蔵で濫読
22年 両親、二弟布川へ
23年 上京、森鴎外を知る
25年 田山花袋を知る
26年 第一高校入学、一家布佐に移住
27年 岡田武松と筑波登山
29年 両親死去
30年 東京帝大入学
31年 夏、伊良湖崎滞在
33年 農商務省勤務
34年 柳田家に入籍
42年 『後狩詞記』出版
43年 『遠野物語』出版、郷土研究会創立
大正
2年 『郷土研究』創刊
9年 退官、『海南小記』
10年 民間伝承の会を創設(後に日本民俗学会と改称)
昭和
13年 『利根川図志』復刻
22年 民俗学研究所設立
26年 第10回文化勲章受賞34年、『故郷七十年』出版
36年 『海上の道』出版
37年 8月8日死去

■柳田國男生誕150周年を記念し、國男少年の利根町での暮らしや足跡をたどる記念行事が行われます。皆さまのご参加お待ちしています

■柳田國男記念公苑
利用時間:
・一般見学…午前9時~午後4時30分
・会議・講座等…午前9時~午後9時
・宿泊…午後3時~翌日午前8時30分
休苑日:毎週月曜日、祝祭日、年末年始
使用料:
・見学者…無料
・集会室利用…530円~
※集会施設の使用者は、町内または龍ケ崎市に居住する方で、社会教育または町の事業に関わる方に限ります。なお、個人でのご利用はできません。

問い合わせ:利根町生涯学習センター
〒300-1615 利根町大字中谷967
【電話】68-3263