- 発行日 :
- 自治体名 : 栃木県大田原市
- 広報紙名 : 広報おおたわら 令和7年9月号(No.1338)
本市の総面積は35,436haで、そのうち森林面積は15,262haと市全体の4割を占めています。
人工林率は76%と県平均の55.7%を大きく上回っています。大田原市で育った森林は「八溝材」として流通しており、適度に寒い環境で育つことにより強度が高く、木目や赤みが美しいのが特徴であり、関東きっての良材として高い評価を受けています。
■森林の代表的な働き
(1)「温室効果ガスの削減」木は「炭素の貯蔵庫」とも呼ばれ、日本のCO2吸収量の9割以上は森林が吸収しています。
(2)「自然災害の防止」木々が根を張ることで、土砂崩れなどを防ぎます。
(3)「水資源の貯蓄・浄水」落ち葉が雨水をゆっくり土の中に浸透させ、川への急激な流出を防ぎ、水を浄化します。
■森林を守ること
森林は成長する過程で木の間が混み合ってきて、お互いの成長を阻害します。そこで、人間が間かんばつ伐(密集した森林から間引く作業)を行い、太陽の光が入ることで健全な森林に育っていきます。
40年以上育った森林は伐採の時期を迎え、木製品や建築用材などに形を変えて、今までとは別の役割で人々の生活に貢献します。また、販売収益の一部は新たな森林を作るための植林費用や管理費に充てられます。
木を「伐きって、使って、植えて、育てる」ことを「森林資源の循環利用」といいます。つまり、人間の手で森林の適切な管理を行っていくことが『森林を守る』ことに繋がるのです。
■森林環境税と森林環境譲与税
▽国民
・森林環境税(市町村経由の国税)
令和6年度から年間1,000円を個人住民税に上乗せ
↓
▽国
・森林環境譲与税(国から配分)
森林整備や木材利用、人材育成などに活用
↓
▽都道府県・市町村
■森林環境譲与税を活用した大田原市の取り組み
▽森林境界明確化事業
相続などで所有者が変わったことにより、所有者自身も所在がわからない森林が増えています。
森林境界明確化事業を実施することにより、手つかずの森林を掘り起こし、効率の良い森林経営が行われるようにご案内いたします。
なお、手入れの行き届かない森林については、森林経営管理制度により順次適切な施業をご提案します。
▽林業経営体への補助事業
森林整備を担う人材の育成やその確保、林業の省力化による働きやすい環境整備に対する補助事業と、森林施業における効率化や適切な森林管理の推進を目的とした補助事業を実施しています。
新規林業従事者に対し、林業機械などの購入費用の補助を行う新規就労者支援事業や、林業従事者が資格を取得する費用の補助を行う人材育成支援事業への補助事業を行っています。
▽木製品導入事業
令和5・6年度事業では、こどもたちが八溝材に触れる機会の提供と木材需要の拡大のため、市内保育施設にミニログハウスや本棚、ロッカーなどを導入しました。令和7年度は、西原小学校に木製ロッカーを導入しました。
▽森林教室の開催
「森林の働きと恵み、循環利用」をテーマに、多くのこどもたちや保護者の皆さまに参加していただきました。気候変動に関わる難しいテーマではありましたが、森林の働きや木材利用について学ぶ機会となりご好評をいただきました。木工製作では、木片を使った自由自在な作品とたくさんの笑顔が見られました。
▽木製品需要拡大事業
八溝材は住宅建材としての利用が多いため、市民の皆さまが普段から目にする機会はあまり多くありません。そこで、民間事業者に市産出材を材料としたキッチン小物などを製作、販売していただくことで皆さまに手に取っていただく機会を作ることができます。今春から、ふるさと納税の返礼品として市産出材を使用した木製品の掲載を始めました。今後は商品数を増やし、販売会などのイベント開催も検討しています。木材需要の拡大に合わせ、市で育った木の価値が高まることが期待されます。
市産出材の販売促進にご協力いただける事業者様がおりましたら、農林整備課までお問い合せください。
▽森林を守るためにできること
どんな森林にも所有者や管理者がおり、所有者などの判断で皆かいばつ伐(一定の区域にある樹木を一斉にすべて伐採)することができます。皆伐が行われると山肌が露わになり、自然環境が破壊されたという印象を抱く方もいますが、それは森林所有者にとって収穫作業になります。
山に苗木を植え、育成・管理して、木材を生産するのが林業です。1本の木を木材として出荷するまでに40年、50年と育てますが、伐採した木を販売する時が唯一の収入です。木材価格が低迷すれば、費用をかけて新たに木を植えることを辞めてしまいます。また、山を切り開く林地開発事業に憤りを感じ、困惑する方もいます。しかし、森林の適切な管理には金銭的な負担があるため、山を手放したいと考えている山主も多数存在するのが現状です。
『森林を守る』ことを森林所有者だけに求めるのではなく、森林の豊かな恵みを未来に残していくために、私たち一人ひとりが『森林を守る』ことについて考えてみましょう。
問合せ:農林整備課[本]4階
【電話】0287‒23‒8012