くらし 「以心伝心」志木市長/香川武文

■命を守る備えを日常から
9月1日は防災の日。大正12年の関東大震災を教訓として、国民の防災意識を高めるために制定されました。関東大震災の死者・被災者は10万人以上ともいわれており、我が国の災害史において未曾有の大災害でありました。現在は、当時と比べて建物の耐震性や通信手段は大きく進歩しましたが、自然に起こる災害そのものを防ぐことはできません。だからこそ、被害を最小限に抑えるための「構え」と「備え」が大切であり、本市でもさらなる防災体制の強化に向けた新たな取組を進めています。
まず、避難所における生活環境の整備です。昨年1月に発生した能登半島地震でも大きな問題になりましたが、トイレ環境の悪化は、感染症の拡大やストレスの増加から、災害関連死にもつながります。そのため本市では、現在の備蓄品に24台の「簡易トイレ」を追加するとともに、どこへでも移動することができ、避難所へ到着後、すぐに使用することができる「災害用トイレトラック」を新たに導入します。加えて、避難所での就寝環境の向上を図るため、簡単に組み立てることができ、通気性が良く耐久性に優れた「簡易ベッド」を新たに1,300台導入するなど、避難所生活における衛生環境の向上と、避難者の心身のストレス軽減につながる取組を進めていきます。
さらに、災害時の情報発信の強化を目的に、自宅や携帯電話の番号をあらかじめ登録することで、高齢者等避難や避難指示などの重要な情報を電話やショートメールにより直接伝えることができる「災害時自動架電システム」を新たに導入します。志木市避難行動要支援者名簿に登録されている人の中で、自ら災害情報を得ることが困難な高齢者などを対象に、タイムリーに情報発信システムを活用することで、避難の遅れを防ぎ、誰一人取り残さない防災体制を構築していきます。
こうした行政の「備え」に加え、市民の皆さん一人ひとりにも日頃から構えていただきたいことがあります。災害発生から最初の3日間(72時間)は、がれきに閉じ込められた方などの人命救助が最優先となるため、避難所への物資輸送などは後回しになる場合があることから、自力で生活できるよう準備することが重要になってきます。改めて各ご家庭での備蓄品を確認し、最低3日分の一人あたり9リットル程度の水や缶詰、レトルト食品、さらには生活必需品や常備薬などの「備え」を心掛けてください。また、ハザードマップの確認やご家族での避難行動計画(マイ・タイムライン)の作成も命を守る大切な「備え」になります。
関東大震災をはじめ、伊勢湾台風や阪神・淡路大震災、東日本大震災などの大規模な災害を経験した日本。
改めて、9月1日の防災の日をきっかけに、ご自身や大切な人の命を守るためにも、いざというときの「構え」と「備え」に向き合っていただければと思います。