- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県富士見市
- 広報紙名 : 広報富士見 令和7年8月号
■沼田 優子 さん(絵画)
◇重なる色 重なる想い
「絵の完成はこれでよいということがなく、どこで完成とするのか悩ましい。ただ、一度筆を置いて額に入れて手放すと、やっと一つの作品として見えてくる」そう語るのは、第73回埼玉県美術展覧会洋画部門で、埼玉県教育委員会教育長賞を受賞した市内在住の沼田さんだ。沼田さんは、知り合いに誘われて絵画教室に通い始めたのをきっかけに、絵画の世界へのめり込んでいく。定年退職を機に武蔵野美術大学へ入学し、絵を本格的に学び始めた。絵に興味はあったが、これまでは仕事と子育てに奔走し、絵を描く時間などはなかったと振り返る。今は、時間があるとキャンバスと向き合い油絵に愛情を注ぐ。描いた絵を見るたびに納得するまで塗り重ねていく。これでいいと思った翌日には、また色を塗り重ねる日々。描く絵に終わりはない。元教師の沼田さんは、教壇に立っていた日々の中で、子どもたちの瞳の奥に無限の可能性を見てきた。今はキャンバスの前に立ち油絵に熱中する自分がいる。油絵の色の重なりは時間の積み重ねと同じようだ。絵の中で育っていく景色は、まるで教え子たちが成長していくかのように彩られていく。
◇自分自身を見つめて
「日常生活のふとした瞬間の風景を描きたい。何気ない日常の風景に魅力を感じる」と話す沼田さん。ありふれた日常の中にある一瞬の輝きと出会えたとき、沼田さんの手は新たな心の想いを描き始める。終わりのない未完成な絵を送り出すこと、それは教師として子どもたちを卒業という節目で送り出すことに似ている。出会いから愛情を注ぎ、成長を見守り、心残りを感じながらも次のステージへ送り出すときのようだ。「絵は人に見られて価値が出る」という恩師の言葉に、心が動かされたと話す沼田さん。人の目に触れ、人の心に響き、絵に価値が生まれることが子どもたちの成長した姿と重なるのであろう。絵を描くことと教師は別世界のようにも思えるが、実は心の奥底には通ずるものがあるのかもしれない。これからも自分自身を見つめながら、日常の心の想いを描き続けることだろう。
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