- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県長南町
- 広報紙名 : 広報ちょうなん 令和7年9月号
長南町に転居したのは、2013年11月のことです。この町に住むようになり、町の人々のあたたかさ、優しさに触れて、この町の素晴らしさを実感しています。
私にとって二つ目の大きな転機は、8年前の直腸がん罹患とその後の排泄障害の経験です。2017年の年末に血便があり、内視鏡検査をしたところ、直腸がんが見つかりました。残念ながら内視鏡での切除はできない状態だったので、2018年3月に腹腔鏡下の切除術を受けました。麻酔から覚めた私が驚いたのは、お腹に袋がついていたことです。いわゆる人工肛門ですね。がんが肛門に近いところにあったので、縫合部分を保護するために、小腸に人工肛門が設置されていたのです。人工肛門が設置される可能性は説明されていたのですが、「自分は大丈夫だろう」と高をくくっていたので、とてもショックでした。入院中は早朝覚醒タイプの不眠が認められました。自分では気づいていなかったのですが、うつ病の症状の一つです。退院して人工肛門の扱いにも慣れると、不眠は解消していきました。私の人工肛門は一時的なものなので、数ヶ月で閉鎖しなくてはいけません。同年7月末の猛暑のなか、閉鎖手術を受けました。閉鎖手術を受けて、数カ月間利用していなかった大腸が再び動き出します。1日後くらいに最初の排泄がありました。便をためておく機能を持つ直腸がないので、直腸のところにある腸管は便塊がやってくると次に送り出そうとします。その先は肛門なので、ひどい排泄障害が生じました。一日に数え切れないくらい、多分40回以上トイレに行ったと思います。便意を感じたと思ったら、次の瞬間にはもうすでに出ているので、なかなか大変です。病院のトイレットペーパーは品質がいまいちで、お尻が痛くなるので、ネットで最高級のトイレットペーパーを購入しました。まだコロナ前だったので、病室まで配達してくれました。退院して2ヶ月間はほとんど外出できませんでした。その後外出できるようになりましたが、3年間は紙パンツが手放せませんでした。4年目くらいからは排泄障害の状態はほとんど変わっていません。一日に30分から1時間くらいは排泄の時間になってしまい、トイレからなかなか離れられません。このため、公共交通機関を利用することは難しく、移動はトイレ付きに改造した自家用車を利用しています。
こうしたいわゆる「見えない障害」がある身になって気づいたのは、障害者政策委員会の委員時代に学んだ障害者施策の重要性です。私たちの社会は、五体満足の人向けに作り上げられています。少しでも標準から外れていると、とても生きづらいことがあるのです。でも健常者はこのことに気づくことがなかなかできません。認知症もこうした障害のある状態と考えることができます。認知症の人が暮らしに不自由を感じない社会を創り出すことが、健常者にとっても住みやすい社会をつくることにつながります。長南町から認知症の人が暮らしやすい町をつくることで、健常者にとっても暮らしやすい社会をつくるようにして行きたいと考えています。
■上野先生を講師に迎えた「認知症学習会」を毎月開催しています。
ぜひご参加ください。
日時:9月17日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター
問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116