くらし 大事な地域防災力 大涌谷での小規模噴火から10年(2)

■火山といきる
◇それは2015年に発生した
平成27(2015)年6月、箱根火山の観測史上初めて大涌谷でごく小規模な噴火が発生しました。これまでの研究では、約3千年前の冠ヶ岳の誕生以降、大涌谷の周辺では約5回ほどの水蒸気爆発が起こったと考えられていますが、いずれも文献には記されていません。2015年の噴火は、私たちの歴史の中に初めて記録を残すものとなりました。
火山活動の活発化を特徴づける、地殻変動や火山性地震、火山性微動などの現象が研究機関等によって観測され、噴火に伴って形成された火口や、噴出物が堆積している様子もとらえられました。2015年6月の噴火はごく小規模なものであるため、噴出した火山灰が今後地層として残される可能性は非常に少ないと考えられます。
人命に関わる被害はありませんでしたが、噴火警戒レベルが3まで引き上げられたことから、大涌谷周辺の立入規制が行われ、箱根町の観光に大きな影響を及ぼしました。

▽箱根ジオパーク マスコットキャラクター「はこジ郎」
「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉があります。
噴火から10年の節目を迎えた今、箱根火山のことを考えてみましょう。

◇噴火だけが危険なの?
火山は噴火するだけが災害ではありません。火山地形ならではの「地すべり」や「山体膨張による地震」などもまた火山災害です。
昭和28(1953)年、強羅地区を流れる須沢で地すべりが発生し、観光客など28人が犠牲となる悲惨な災害が起きました。
この災害は、火山特有の噴気ガス熱水(温泉)作用により地下の岩石が脆くなり粘土化(温泉余土)したことで引き起こされました。このような現象を「火山性地すべり」と言います。

大涌谷周辺では砂防ダムやアンカー工などの地すべり対策工事を行っています。また、神奈川県温泉地学研究所では、山のふくらみや細かな地震を観測して箱根火山の状態を常に監視しています。

《自然災害伝承碑を知ってますか?》
自然災害伝承碑は、過去の災害による被害を伝える石碑やモニュメントで、町内には10基の石碑が掲載されています。
過去にどんな災害が起きていたのか箱根や日本各地の災害を調べてみましょう。

◇火山がもたらすものは災害だけじゃない
《独自の文化》
箱根火山が生んだ険しい地形の中で、警戒や防衛に優れた場所として狭窄部に設けられた「箱根関所」は、江戸時代交通史の重要な遺跡である。
関所が出来たことにより、宿場町が栄え、一旦足をとめた旅人たちは、箱根温泉や寄木細工などの箱根の文化、箱根の良さを知り全国に伝えてくれることとなった。

《景観》
土地形成の歴史が示すとおり、長い年月をかけ火山が噴火を繰り返すことにより、山ができ、湖ができ、谷が掘られて、この複雑かつ険しい地形が出来た。さらに、山岳地帯であることから、上昇気流が発生し雨雲が発達しやすいこと、海からの湿った空気を山が受け止めることにより、多雨になり豊かな植生を生み雄大な景観が生まれた。

《温泉》
箱根温泉は、全国でも有数の温泉地であり、源泉数は約350ヶ所、湧出量は毎分2万ℓを誇る。
神奈川県の面積に占める箱根町の割合は約4%だが、源泉数・湧出量はともに県全体の60%近くを締める。
箱根町に温泉が集中して多いのは、箱根火山の存在によるものである。

■火山とともに暮らしていくために
箱根町は、温泉や美しい景観など、様々な魅力があふれる町です。それらの多くが火山の恵みであることを認識し、享受しつつも、いざというときに備える必要があります。
この地域には、箱根ジオミュージアムや生命の星・地球博物館、温泉地学研究所など、火山を学ぶことができる施設が多くあります。日頃から火山についての知識を蓄え、正しく火山を恐れることが有事に自分を守ることに繋がります。

■自分で救う自分の命 ~自助の取り組み例~
◇[01]食料の備蓄
災害時の備蓄というと災害時用の食糧を想像すると思いますが、ここで大切なのは日頃から「何か」を備蓄しておくということです。
備蓄方法には食糧を買って備蓄しておき、賞味期限が近づいてきたら消費し、また食料を買う…という「ローリングストック法」があります。
普段口にする物の中にも意外と日持ちする食糧があったりするかもしれません。

◇[02]自宅の耐震化
町では木造住宅の耐震化を促進しています。補助制度もありますので、この機会に耐震について考えてみては?

◇[03]家具の固定
地震による被害は、建物の倒壊のほかに家具の転倒による圧死があります。家具の配置を確認し、固定してみては?

◇[04]家族との連絡手段
自宅以外の場所で被災したり、家族が遠方に住んでいたりする場合に、家族の安否確認方法を事前に決めておきましょう。

◇[05]防災リュック
緊急避難時に自宅から避難所へ持ち出す防災グッズとして、防災リュックや非常用持ち出し品を用意しておきましょう。