くらし OYABE×地域おこし協力隊

■梶内隊員(就農関係)
地域おこし協力隊の梶内です。気分転換にと早朝の山に散歩に入ったとき、不思議な“欅の切り株”に出会いました。切り株といっても形は歪で、大きな“ひこばえ”が数本立ち、まるで髭のようにツタが幹に巻きついた、とても大きな切り株でした。「おぉ!カジかぁ!まぁた、へこんどるんか(笑)。へこむなんて300年早いわっ!(笑)。なんで名前を知っとるか?わしらは世界の大体のことは解っとる。都会のことは仲間が減って解ることも少なくなってしもうたけどの」と。驚く僕を尻目に、“欅の切り株”は一方的に語り始めたのです。「わしらからみても、昔の人間は、山も川も海もよう知っとって、上手に付き合っとった。人間もわしらの仲間だった。季節ごとにヤマウド・カタハ・栗いろんな山の幸を食べ、炭や焚き付け用にと雑木林を守り、竹や蔓、わしらの皮なんかを使って籠や箕なんかも作っとった。そういえばお前の家にも“枠の内”があったな、わしも“鰤起こし”に大当たりしなければ、どこぞのお屋敷の“枠の内”を飾っていたかもしらん(笑)。こっちの人間たちは家をとても大切にしてきた、座敷なんかはそりゃもう贅沢に仕上げようとしたもんや。葬式も結婚式もみんな家でやっとったからの。見栄っちゅうんかの(笑)。柱に使う檜なんかは爺さんが苗を植え、息子が育て、孫が木を切り乾燥させる。お前も製材所の隅で“大”“△”なんて描かれた皮付きの丸太を見たやろ。手を掛けて育て年月を掛けて乾燥させた木は、硬いだけじゃなく“ネバリ”がある。そんな材料を大工が仕口やら継手を使って組んで作った家は、しなやかで丈夫。わしら木も永い第二の人生の始まりじゃ(笑)。どっちが良いかは分からんが、今の家とは材料も作り方も全然違う。でももう作れんやろなぁ…」こうして『欅のヒゲじい』の“永い永い話”は、始まったのです。
この話は、出会った方々からお聞きした話をもとにした完全なフィクションです。そこは違う。こんな話もあるよ。という方がいらっしゃいましたら、ぜひお聞かせください。

地域おこし協力隊 @oyabe_satoyamalife