- 発行日 :
- 自治体名 : 石川県七尾市
- 広報紙名 : ななおごころ 広報ななお 令和7年(2025)9月号
(6)依頼主は誰?
そもそも、この絵の依頼主は誰なのか?
七尾生まれの長男で、若くしてこの世を去った久蔵に対するレクイエムの絵ではないかとみる研究者もいます。とても興味深い見解ですが、「当時は斬新過ぎて依頼主が気に入らず、ボツになった草稿ではないか」という説まで飛び出しました。
今の屏風の形があまりにも完璧なので、もし制作当時は屏風ではなかったとすれば、現在の形に改装した人物は、大変な目利きで抜群の美的センスを持った人物となります。等伯本人か、等伯に近い優秀な弟子……あるいは「千利休あたりなら」と思うのですが、利休は本図の制作前に自刃しています。
(7)描かれたのはどこの松?雪山は?
能登(七尾)の原風景とも、等伯の心象風景とも言われる本図。描かれた松は七尾の松、羽咋の松、能美市根上町の松、県外では琵琶湖周辺の松など、いろいろな説があります。また、雪山も象徴としての富士山、白山、石動山など諸説あるのです。ただし、当時の画家たちは中国の優れた絵画の影響を受け、必ずしも実写ではない絵も描いています。
(8)松林だけを描いた?
墨だけで描かれた松林。しかし、余白も多いこの絵。前回特別公開した際、「まるで自分も霧の中にいるみたい」という感想や、小学5年生の児童が「冷たい空気が流れてくるみたい」とつぶやいたことを覚えています。本図の湿潤な空気や柔らかい光は、常に日本の四季を敏感に感じていた等伯だから描けたとも言われます。皆さんもこの機会に、画面から空気や光も感じ取ってみてください。
(9)静と動が共存する絵
「松林図屏風」は近づいて見ると、裂け筆などを置いて跳ね上げるような感じで、等伯の息遣いが伝わってくるようです。ところが、後ろに離れていくと、ある時点で静かな静寂の世界に変わるのです。どちらも魅力的なので、ぜひ両方試してみてください。
■展覧会情報
観覧料:一般1,000円(900円)、大学生350円(300円)、高校生以下は無料
※( )は20名以上の団体料金
前売り券発売中!ファミリーマート、セブン-イレブン、ローソン・ミニストップで取り扱い(JTB商品番号…0266829)
※前売り券の発売は9月19日(金)まで
問合せ:七尾美術館
【電話】53-1500