- 発行日 :
- 自治体名 : 福井県永平寺町
- 広報紙名 : 広報永平寺 令和7年7月号
■教育研究功労
進士 五十八(しんじ いそや)さん
◆進士 五十八さん
永平寺門前再構築プロジェクトの監修を手がけた日本を代表する造園学の第一人者。福井県立大学元学長。
神奈川県在住。(写真提供…県立大学)
◇町民のみなさんへ「風景の目でまちを歩いてみて」
みなさんには福井県立大学の第5代目学長として大変お世話になりました。役場のみなさんには「永平寺町学」というカリキュラムで授業に参加していただいたり、指導していただいたりしました。ありがとうございました。
永平寺町民のみなさんには、ぜひ、風景の目でまちを歩いてみてほしい。自分が住んでいるまちのことはあまりにもよく知っているので、意識しないで歩いているが、風景の目でまちを見ると、大事なことが見えてくる。永平寺町には永平寺という世界的な大本山もあり、松岡十二曲がりのような非常にコンパクトな歴史の趣もある。大きな九頭竜川もあり、小さな永平寺川もある。大きいものから小さいもの、世界的なものから市民的なものまでいっぱいある。上手にまち歩きをすると、それがわかる。これが「風景の目で生きる」ということの一つです。
◇永平寺門前の再構築プロジェクトを監修
永平寺門前整備では、コンクリートで固められていた永平寺川の護岸を多自然型の護岸に戻し、川底には石を置き、段差を作って水の音を響かせ、音の風景を再生した。参道はゆったりと曲線を通っていくようにした。足元は、よくあるつるつるした石畳ではなく、叩いてでこぼこにした歩きやすく足に優しい質感の石畳にした。
参道の入り口に大本山永平寺と書いてある石柱があって、参道を通ってずっと奥まで行くと、五代杉の向こうに七堂伽藍があり、永平寺の本拠がある、それがいい。目に見えないからこそ、荘厳さを感じるもの。見えすぎると安っぽくなってしまう。だから永平寺門前の参道はそういう構成にしてある。「そのものをもっと良くすばらしく魅せる」というのが私の専門のやり方。
出雲大社などの日本の古い神社はみんな2kmくらいずっと歩かなければ、神社のいちの鳥居にたどり着けない。俗世界からそこに行きつくまでの時間と距離が必要なんです。社寺の本殿や本堂までの距離の長さが荘厳さを魅せる。永平寺はなぜこんな不便な奥の奥にあるのだろうと思うかもしれないが、道元禅師は禅の修行にふさわしい環境としてこの場所を選んたはずです。
◇まちづくりとは
家から家並み、家並みから町並み、その遠くに山並みがあって水のべ(川など)がある。そういうふうに広がっている。それがつながったときにその雄大さに「やっぱりこれは北陸に来ないとダメだ。本物の風景はここでしか味わえない」と感じるということになる。そういうまちづくりを目指して、みなさん頑張ってください。期待しています。