- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県沼津市
- 広報紙名 : 広報ぬまづ 2025年11月1日号
■さらなる美味しさと さらなる個性を支える
大岡にある静岡県工業技術研究所沼津工業技術支援センターは、酒造りの技術革新を支える重要な拠点です。
このセンターが全国に名を轟かせたのは、日本酒造りに欠かせない「酵母」の研究-開発。なかでも、バナナを思わせるフルーティーで華やかな香りを生み出す「静岡酵母」は、静岡県独自の地酒スタイルを確立し、県内の酒蔵の発展に大きく貢献しました。この酵母の生みの親である故・河村伝兵衛氏らによる長年の研究が、吟醸王国とも呼ばれる静岡の地酒の評価を築き上げました。
近年、このセンターの存在感は、クラフトビールの分野でも高まっています。県内での醸造所の増加に伴い、センターではビール酵母の研究に本格的に着手。主任研究員の鈴木雅博さんらが、駿河湾の海洋深層水やシラスなど、沼津周辺の自然界から酵母を採取し、ビール醸造に適した独自の酵母を分離・評価する研究を進めてきました。
鈴木さんは「沼津には、この土地ならではのポテンシャルが満ちています。適度にミネラル分を含んだ富士山の地下水という最高の水質に加え、柑橘類などの素材も豊富。また、醸造家たちの探究心も尽きることがありません」と沼津とビールの可能性を紐解(ひもと)いてくれました。続けて「同じ酵母でも醸造所によって個性の違うビールになるので、飲み比べてみるのもいいかもしれません。自分の好きな一杯が見つかるといいですね」と笑います。また、上席研究員の袴田雅俊さんも「我々の研究で生まれた酵母が、彼らの挑戦の後押しとなれば嬉しいです。このまちの風土と技術が融合し、沼津らしいビール文化がさらに花開くと信じています」と話してくれました。
センターの研究は、地元の醸造所にとって大きな強みとなっています。これまでは海外の酵母に頼ることが多かったクラフトビールですが、地元の風土に合った酵母を使うことで、より個性豊かで、沼津らしい味わいを追求できるようになりました。静岡酵母の開発から続くたゆまぬ研究が、沼津の酒の未来を、そして新たな食文化を拓(ひら)いています。
■飲もう、贈ろう。美味しさも楽しさも満点
沼津市のふるさと納税でも、クラフトビールは人気が高まっている返礼品となっています。
富士山由来の清らかな地下水と、地元醸造家たちの熱意が詰まった個性豊かなクラフトビールは、遠方から沼津のまちを応援する人々にとって、沼津の魅力を感じられる特別な品です。沼津に直接足を運ぶことが難しくても、沼津でビールを飲んでいる気分になれるのかもしれません。
故郷である沼津を離れて暮らしている人や市外の知人・友人に、沼津のクラフトビールをどうぞおすすめしてください。
令和8年1月末まで、「TAP ON SURUGA」プロジェクトでは、市内外のタップルームを巡るスタンプラリーを開催しています。登録のある23店舗でビールを飲むごとにスタンプを獲得。スタンプを集めると、抽選で限定グッズがもらえるなど、様々な特典が用意されています。
この取組は、地域の醸造所や飲食店が連携し、県東部エリア全体のクラフトビール文化を盛り上げることを目的としています。スタンプラリーを通じて、人々が新しいお店やビールの魅力に出会い、交流を深めるきっかけとなっています。
スタンプラリーの詳細は、本紙またはPDF版掲載の二次元コードよりご覧ください。
■美味しすぎ、楽しすぎ。 そして飲みすぎ注意
楽しいお酒の席でも、飲みすぎには注意が必要です。特にクラフトビールは、アルコール度数が高めのものもあり、気づかないうちに飲みすぎてしまうことも少なくありません。
そこで、ぜひ試していただきたいのが、「チェイサー」としてクラフトビールの仕込み水と同じ水質の水を飲むことです。
沼津の水道水は、富士山などの山に降った雨や雪解け水がもととなった良質な地下水で、クラフトビールの仕込み水に近い軟水なので、水道水でもチェイサーの役割を果たしてくれます。
チェイサーは、アルコールを分解する上で必要な水分を補給するだけでなく、口の中をリフレッシュさせ、次に飲むビールの風味をより新鮮に感じさせてくれます。また、ビールを飲むペースを緩(ゆる)め、飲みすぎを防ぐ効果も期待できます。健康を意識しながら、この土地ならではのクラフトビールを楽しんでみてはいかがでしょうか。
■沼津の自慢 未来をつくるクラフトビール
これまで紹介してきた沼津のクラフトビールの話題は、単なる飲み物の話ではありません。そこには、富士山の清らかな地下水、温暖な気候が育む豊かな素材、そして何より、このまちを愛し、新しいビールづくりに挑戦し続ける人たちの情熱が詰まっています。
日本酒の伝統を守りつつも、革新的な「静岡酵母」を生み出した先人たち。その技術はクラフトビールにも継がれていきます。そして、「東駿河湾クラフトビール地域循環共生圏」というプロジェクトに取り組む若き醸造家たちの挑戦。彼らの存在は、沼津のビール文化の未来を拓いています。
年末年始は、そんな沼津のクラフトビールの物語に思いを馳せる絶好の機会です。グラスに注がれた一杯には、このまちの風土と人々の想いが凝縮されています。そして、その一杯が地域の未来をつくる一助になっていることを感じてください。
私たちの沼津にクラフトビールがあることを誇りに思いつつ、美味しく、楽しく飲むことは沼津のクラフトビールを応援することにつながります。では、ご唱和ください、クラフトビールで「カンパーイ」!
問合せ:商工振興課
【電話】055-934-4748
