- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県大府市
- 広報紙名 : 広報おおぶ 2025年6月1日号
■アダムとハウンのインターナショナルリレーコラム
亀石と英語
Adam Simmonds
異なる人種や文化的背景を持つ人が共に暮らすには、お互いの違いを尊重し合うことが大事ですが、その違いが常に強調された状態であったら居心地良く感じられるでしょうか。
最近、こどもを連れて奈良県明日香村の遺跡を自転車で巡りました。鬼の爼(まないた)・鬼の雪隠(せっちん)・亀石など、私が何度も訪れた明日香村の古墳や石造物をこどもと一緒に回るのが夢でした。私たちが亀石に近づくと突然、写真を撮り合っていた年配の男性の1人から英語が飛んできました。「It’s a stone tortoise.(石の陸亀です)」。こどもと日本語で話していた私が、いきなり知らない人に英語で話し掛けられて、周囲の注目を浴びて、亀石のように固まってしまいました。
親子で楽しく過ごしていたことも、日本語で話していたことも、20年以上の滞在歴も関係なく、男性は私の顔だけを見て、親切にも「外国人だから日本語も日本も分からないだろう、あえて英語で教えてやろう」と思ったのかもしれません。しかし、外国人であることがより強調され、指をさされて「外人だ」と叫ばれているような気分でした。
顔などの外見の違いで特別扱いされるより、まず同じ人間として「こんにちは」と普通にあいさつされた方が、よほど居心地が良い気がします。