くらし 鳥羽・海藻文化革命 岩尾博士の海藻博物記 vol.42

■イシクラゲ
今回紹介するのは海藻でもなければ植物でもない。イシクラゲという生物だ。梅雨時期に目立つからか、駐車場を管理しているかたなどから時々「地面から何かワカメみたいなものが生えてきたけど、あれは何?」と問い合わせがある。雨の後に地面の上にワカメのようなブヨブヨしたものが撒かれたように大発生しているのを見たことがある人も多いのではないだろうか。そしていつの間にか消えているように見えるアレである。消えているわけではなく、乾燥して小さく黒くなり、乾いた泥に紛れて探しにくくなっているだけなのだ。
イシクラゲの学名はノストックコムネといい、シアノバクテリアというバクテリア(細菌類)の仲間であり光合成をすることができる。シアノバクテリアは地球に酸素を大量にもたらした最初の生物としても有名である。藍藻とも呼ばれ伝統的に藻類としても扱われてきたが、藻類や陸上植物とはまったく違う系統の生物である。乾燥に大変強く、体が乾き始めるとトレハロースを作り、そのトレハロースが細胞を乾燥から保護する。また紫外線にも大変強い。80年前から乾燥したままのイシクラゲに水を与えると、増殖したとの報告がある。滋賀県では「姉川くらげ」と呼ばれ天ぷらや酢の物にして食べられていたが、今ではほとんど食べられていない。ただし、そのあたりの地面に落ちているイシクラゲは、洗っても石や泥が取れず衛生的とは言えないので、食べることはおすすめしない。

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