文化 琵琶湖疎水関連施設が国宝・重要文化財に

琵琶湖疏水は明治期に建設されて以来、現役の施設として市民の暮らしや産業などを守り支えている運河です。2018年のびわ湖疏水船の復活や、2020年の日本遺産認定など、文化的な魅力が高まる中、この度、国宝・重要文化財に指定されることになりました。

■琵琶湖疏水の歴史を振り返る
◇建設に着手
明治維新で事実上、都が東京へ移されたことによって人口が減少し、産業も衰退していきました。第3代京都府知事の北垣国道は、危機的状況にある京都のまちを復興させるため、京都と大津をつなぐ水路の建設に着手しました。

◇第一疏水が完成
工部大学校(現東京大学工学部)を卒業して間もない田邉朔郎が工事責任者に就任。
延べ400万人の作業員を動員し、約5年に及ぶ難工事の末、1890年に第一疏水が完成しました。

「国内の大規模な土木工事が外国人技師の設計監督で行われていた時代に、初めて日本人の手で成し遂げた事業だったんだ!」
(上下水道局マスコットすみとくん)

◇蹴上発電所が稼働
第一疏水の完成により、1891年に蹴上で日本最初の一般供給用水力発電所が稼働し、まちに電気が送られました。日本初の電気鉄道の営業が開始されるなど、人々の暮らしが大きく変化しました。

◇第二疏水が完成
電力の充実や上水道の整備など、さらなるまちの発展に向けて1912年に第二疏水が完成。発電量の増加と同時に、蹴上浄水場から水道水の供給も開始しました。以来、琵琶湖疏水は京都に命の水を届けています。

「琵琶湖疏水は水道や水力発電、舟運など多様な役割を通して、京都のまちの再生と発展を支えてきたのね!」
(上下水道局マスコットひかりちゃん)

■琵琶湖疏水と指定施設マップ(※本紙参照)
[蹴上エリア]
・疏水分線とは…
蹴上から北に流れる水路のこと。分線沿いにある哲学の道では、四季折々の景色を見ることができるわ!

[山科エリア]
・船溜(ふなだまり)とは、かつて荷下ろしや人の乗り降りなどのために作られた船の停泊所のこと!

[伏見エリア]
・鴨川運河とは…第一疏水のうち鴨川に平行して南に流れる約9kmの運河のこと。歴史ある橋が多く架かっていて、春には桜も楽しめるのよ!

[大津エリア]

◇重要文化財に指定される施設
(国宝(1)~(5)~を含む)
(6)大津閘門(こうもん)・堰門(せきもん)
(7)大津運河
(8)安朱川(あんしゅがわ)水路橋
(9)第一〇号橋
(10)第一一号橋
(11)夷川(えびすがわ)閘門
(12)第五隧道
(13)第六隧道
(14)日岡隧道
(15)新旧両水連絡洗堰(あらいぜき)
(16)合流隧道
(17)蹴上放水所
(18)七瀬川放水所
(19)蹴上浄水場第一高区配水池
(20)旧御所水道ポンプ室
(21)蹴上発電所旧本館
(22)夷川発電所本館
(23)伏見発電所本館
(24)本願寺水道水源池

◇国宝に指定される5施設
近代土木構造物としては初めての指定!
(1)第一隧道(ずいどう)
約2444mのトンネルであり、建設当時は日本最長。工期短縮のため、トンネル工事では日本で初めての竪坑(たてこう)工法が採用されました。

竪坑工法とは…
山の両側から掘り進むほか、山の上から垂直に穴を掘り、そこからも両側に掘り進める方法です。

(2)第二隧道
約125mのトンネルで、西口の上部が少し尖ったような形になっているのが特徴。

(3)第三隧道
山科から蹴上に抜ける約852mのトンネルで、東口はゴシック風、西口は古典主義風のデザイン。

[ここにも注目]
各隧道の出入り口部分には、「扁額(へんがく)」と呼ばれる、石の額が設置されているよ。明治を代表する政治家たちが揮ごうした貴重なものなんだ!

第一隧道(東口)の伊藤博文による扁額「気象萬千(きしょうばんせん)」(注)
(注)「さまざまに変化する風光は素晴らしい」の意。
※本紙参照

(4)インクライン
蹴上の船溜と南禅寺の船溜の間の斜面を、荷おろしすることなく舟ごと台車に乗せて昇降させる目的で建設された傾斜鉄道。全長約582mで、建設当時は世界最長。
インクラインの下を通るトンネル「ねじりまんぽ」も一緒に指定!

(5)南禅寺水路閣
疏水を蹴上から北へと分岐させた疏水分線の一部で、南禅寺境内を通るれんが造りの全長約93mの水路橋。

■この機会に、琵琶湖疏水をもっと知ろう!
◇琵琶湖疏水記念館
施設と併せて重要文化財に指定された関連備品や文書なども展示しています。

問合せ:琵琶湖疏水記念館
〒606-8437 左・南禅寺草川町17
【電話】752-2530【FAX】752-2532
時間…9~17時(入館は16時半まで)
休み…月曜(祝日の場合は翌平日)
入場…無料

◇そすいさんぽ
季節ごとの景色を見ながら疏水沿線を歩いて楽しめる散策道。3コースあり、ルート上には琵琶湖からの距離を示す道標などを設置しています。

このほか、船上から関連施設や四季折々の景観を楽しめる、びわ湖疏水船が春季・秋季限定で運航しています。

本紙8・9面でも市所有の文化財を紹介していますので、併せてご覧ください!

問合せ:上下水道局総務課
【電話】672-7709【FAX】682-2711