くらし 特集あなたにとっての平和とは? 終戦から80年 平和を守るために(2)

■戦争体験者でない私にできること
久御山町遺族会 会長 坂正義(さかまさよし)さん
遺族会会長として活動する坂さん。戦争を繰り返さないため、戦後生まれの私たちにできることを聞きました。

▽わずか20歳
私の兄・香(かおる)は終戦間近の昭和20年7月24日に戦死しました。わずか20歳でした。
当時、大学に在籍していた兄は戦争のため、名古屋の中部防衛本部光隊に入隊し、陸軍兵科特別幹部候補生として国防の任務に従事していましたが、空爆により帰らぬ人となったと聞いています。
父は戦争や兄のことについて多くを語りませんでしたが、兄の高校の寮歌をいつも口ずさんでいました。きっと思い出したくないほど悲しかった一方で、兄のことを忘れられない想いだったんだと思います。
私は戦後生まれで戦争を体験していませんが、戦後復興の時期に駅前で腕や足を亡くした傷痍(しょうい)軍人が白装束をまとい、箱を前に置いて募金を求める姿は今でも脳裏に焼き付いています。当時の状況をあまり把握できていない子どものころの私にとっては怖い体験でした。

▽記憶の継承と変化
あの惨劇を極めた大戦終結から年の歳月が流れ、その遺族や遺児の人たちも高齢になってきました。全国的にも年々、遺族会員が減っており、後継者不足で解散する自治体が増えるなど遺族会の組織維持も困難になりつつあります。
今私たちは豊かな生活を送ることができていますが、それは多くの犠牲の上に築かれていることを忘れず、二度と戦争の惨禍を繰り返さないためにも、私たちは戦争の悲惨さと平和の尊さを訴え、次世代に伝承していかなければなりません。残念なことに、世界では今もなお、紛争やテロ行為などが絶えることはなく、子どもを含む大勢の人々が戦火にさらされ苦しんでいます。

▽私にできる平和の伝承
私もそうですが、当時を体験していない人が戦争を言葉で語り継ぐのは難しいと思います。それでも、当時の記録写真やビデオなどを用いて戦争の恐ろしさ・悲惨さ・おろかさを次世代を担う子どもたちに感じてもらい、改めて平和について考えてもらいたい。それが私にできる平和の伝承だと思っています。