くらし 〜高取で頑張る『高取人』〜船倉弁天神社「おんだ祭」

■~豊作を祈る春の祭典~
春は、農作業の始まりの季節。そんな春、丹生谷大字の船倉弁天神社では、その年の豊作を祈り新しい一年の厄災を払う「おんだ祭」が毎年4月の第一日曜日に行われます。
今月は、約30名が参加した「おんだ祭」を取材しました。

■船倉弁天神社
創建時期は不明なものの、江戸天保時代には17カ村の郷社として信仰された「船倉弁天神社」。標高300mという高地の「大字丹生谷字スハル」に位置するこの場所は、神様が下りてきて鎮座された場所、「神様が座った場所」とされています。また、市尾の如来寺近くの古道にある「鳥居山」には、船倉弁天神社の「一の鳥居」があったといわれています。
そんな由緒ある船倉弁天神社で、毎年「おんだ祭り」は行われます。

■牛男と田男
忌竹(いみたけ)としめ縄で囲んだ中を田んぼに見立てたスペースで、いよいよおんだ祭りが始まります。
牛面を被りマントを着た「牛男」と、その牛を使う「田男」の役割を担う男性が、からすきで掘り起こし、マンガで代かきを行います。牛男に扮した男性が「モーッ」と声を上げる姿は迫力満点。約30名の参加者はその様子に釘付けでした。

■模擬苗での田植え
うねを整えた後は、神に奉仕する神役でもある「早乙女」と呼ばれる女性がサナエ(杉葉の模擬苗)で田植え神事を行います。
田んぼの水口にさすと虫がつかず豊作になると言われるサナエ。神事終了後は各自の田んぼの水口にさして、豊作を祈ります。

■豊作を祈って…
参加者が一人ずつ玉串奉納を行った後は、最後に神仏習合の護摩焚きを全員で般若心経を唱えながら行います。
由緒ある神社で厄災を払うとともに、美味しいお米の収穫を祈願しました。

■≪現地で知った!≫田んぼに繋がる「さ」
〇桜…「さ」は「サ神様」で主に田の神様、「くら」は神様の居場所「御座(みくら)」を意味するという説。
田の神が桜の花びらに宿り、田に下りて稲作を守護するという。
稲作りの始まりと桜の開花時期が同じなので、満開に咲く花の下で豊作を願ったと言われる。
〇サオリ…田植えの開始時に田の神を迎える祭り。
〇サナブリ…田植えの終わりに田の神を送る祭り。サノボリの転訛。
〇サツキ…稲の神様が田植えで活躍する5月は「サの月」すなわち「さつき」。
この時期に咲く花なので、「さつき」の名前になった。
★その他、「サナエ」「サオトメ」「サミダレ」なども、田んぼに繋がる言葉です。