イベント Interview ダブル20周年を迎えて

■十津川村旅館組合長
ゑびす荘 玉置 晋也(たまき しんや)さん
「十津川村の温泉文化を守り、高め、紡いでいきたい」

◇玉置さんにとって、「温泉」とは?
私にとって、温泉は生まれた時にはすでに祖父母が温泉旅館をやっており、本当に身近で普通に隣にあるものでした。物心がつき、その身近なものが特別なことだと分かり、大人になり旅館を継ぎ営業するなかで歴史的にも文化的にも素晴らしい存在であることが分かりました。
村の3つの源泉について、歴史的には湯泉地温泉が一番古く、約千二百年前にはその存在が見つかっていたという記述があります。次に十津川温泉が元禄年間(1688〜1704年)、上湯温泉が享保年間(1716〜1736年)にそれぞれ発見されたと云われます。
20年前の循環濾過(再利用)しないという「源泉かけ流し宣言」は、十津川村の温泉をより文化的に高めたといえる宣言でした。果たして、全国で循環濾過しない温泉はどれくらいあるでしょうか。十津川の温泉は湧いてきたそのままの温泉を利用しています。おそらく、我々のような源泉かけ流しの温泉は日本でも少数といえるでしょう。

◇今後の意気込みなど、ありますか?
この先はこの素晴らしい温泉をバックボーンとして、村内観光業者や役場と連携し十津川村の観光を盛り上げていけたらと思います。
また昨年行われた源泉かけ流し温泉シンポジウムでは「再発見」をテーマにやりとりがされました。まだまだ十津川温泉郷の魅力は隠されていると思いますので、それらを見つけていくことで十津川村の温泉文化の発展の一助となれば幸いです。
そして自分が身近に感じていたように、村の方にもより温泉を身近に感じてもらえる取り組みができればと思います。
一人では難しいですが、温泉関係者はもちろん、観光協会、役場、そして村の方全員で協力して十津川村の温泉文化を守り、高め、紡いでいければと思います。

■十津川観光開発株式会社
ホテル昴 北村 篤資(きたむら あつし)さん
「十津川温泉郷がもっと多くの人に知られるように」

「十津川温泉郷」の「十津川飛香」など、各地の温泉地に宿る神様として、各地の温泉のキャラクターを展開する「温泉むすめ」。株式会社エンバウンド様(東京都)がプロデュースする地域活性化メディアミックスプロジェクトです。
昨年8月、十津川温泉ホテル昴では、ダブル20周年を機に「十津川飛香」の描き下ろしパネルを設置しました。二枚の扇で盆踊りを踊る浴衣姿のデザインで、缶バッジなどのグッズを販売しています。今回コラボを始めた「温泉むすめ」についてお伺いしました。

◇コラボ後、変化はありましたか?
普段はご年配のお客様が多いのですが、「温泉むすめ」をきっかけに、30代から40代くらいの男性のお客様が多くなりました。九州や関東など、遠方からもいらっしゃいます。龍神や勝浦、白浜、天川村にいる「温泉むすめ」と温泉を巡って、十津川村にも足を延ばされます。十津川飛香がいなければ、わざわざ十津川村にいらっしゃる機会がなかったのでは。ありがたいことにグッズもよく売れていますよ。

◇今後、どう活用したいですか?
私たちは十津川は源泉かけ流しの素晴らしい温泉地と知っています。しかし、全国の温泉地で我々も聞いたことがない温泉があるように、意外と十津川の温泉って知られてないんです。もっと知名度を上げなくてはと思いますね。そんな中で、「温泉むすめ」は良い宣伝効果があると実感しています。
今後、「十津川飛香」の新しいグッズの販売も計画していますし、近隣の「温泉むすめ」とコラボもしてみたいですね。「温泉むすめ」はファンが多いですから、「十津川飛香」を通して十津川温泉郷や源泉かけ流しの素晴らしさを知ってもらい、多くの人に足を運んでいただきたいと思います。

■大字桑畑
中西 秀実(なかにし ひでみ)さん
中西 浩文(なかにし ひろふみ)さん
「世界遺産だからって意識はないけどね
ただ、誰が来てくれても、歩きやすい、登山しやすいように」

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の参詣道の多くが、山の中の自然道。道を良好な状態に保全し、次代につなげるために、多くの人が協力して参詣道を守っています。十津川村では、熊野参詣道小辺路は大字の人々に、大峯奥駈道は「新宮山彦ぐるーぷ」に協力いただき、定期的に道の整備を行っています。
小辺路の整備を行っている大字桑畑の中西秀実さんと息子の浩文さんに、道の整備についてお伺いしました。

◇どんなことをするのですか?
私らが受け持っているのは昴の郷近くの柳本吊り橋から頂上の果無峠まで。月に1回はパトロールも行ってて、ちょくちょくと作業しながら、大丈夫かなと見回ってます。自分の仕事もしながらの整備やから、そんなにしょっちゅうは行けないし、やっぱり目に付けば多少なり作業して、1回行ったら一日はかかりますよ。
特に台風明けとかは、倒木とか木の枝が落ちていたり、道の整備は大変です。やっぱり体力も要ります。
いま作業している人たちも年を取ってきたからね。だから息子とか、若い人が来たら、ゆくゆくは引き継いでもらうつもりでいるんや。

◇世界遺産を保全することについて、どんな思いをお持ちですか?
世界遺産だからどう、というのは考えてないかな。これからの季節、観光客も増えてくるし、いまは外国の人も増えています。本宮まで歩く人もいるし、昴の郷から果無集落や頂上まで行って折り返す人もいる。まあ、誰が来てくれても、歩きやすい、登山しやすいように整備はせんといかんなと思っているのでね。
歩きに来てくれた人が、「ここ整備してくれてるんやね」「きれいになって歩きやすいよ」って言ってくれると、整備していて良かったなと思います。