- 発行日 :
- 自治体名 : 広島県安芸高田市
- 広報紙名 : 広報あきたかた 令和7年4月号
地域おこし協力隊の一人が3年間の任期を終え、次のステージへと歩みを進めます。地域の食文化への挑戦を振り返り、これから目指す未来に迫ります。
■2025年3月退任 中村博之さん
◇情熱を注ぎながら鹿肉の可能性に挑戦
広島市の飲食店で料理人として経験を積んだ後、「八千代産直市場」の店長を8年間務めた中村さん。地域の食文化に携わる中で、栄養価の高い鹿肉の可能性に気付き、加工品の開発に取り組んできましたが、クセや匂いが強いという固定観念が根強く、広く受け入れられるには大きな壁がありました。「まずはジビエについて学ぶことが必要」と、解体技術を習得し、正しい処理を施した鹿肉の魅力を発信する活動をスタート。イベントで鹿肉カレーなどを提供し、多くの人においしさを知ってもらいました。また、「まずは目の前の人に食べてもらいたい」という思いから、児童館の昼ご飯に鹿肉カレーを差し入れたところ、子どもたちは「おいしい!」と目を輝かせてくれました。「子どもたちは先入観なく食べる。こうした経験が、将来鹿肉を受け入れる土台になると思いました」。活動2年目には、鹿の骨付き肉で作るボーンブロススープを開発。カレーやスープのベースとしても使いやすいと鹿肉の新たな可能性を見出しました。3年目には、このレシピを活用した鶏の白湯スープと鹿のスープを組み合わせたラーメンを開発。土師ダムの桜まつりでキッチンカーを出店し、多くの来場者に提供しました。
◇料理人らしく“食”で地域に恩返しをしたい
退任後は神楽門前湯治村に自らの店をオープンすることを決意。店名は「鶏鹿(ケイロク)」で、夜はバー営業も予定しています。「あきたかた焼き専門のお好み焼き屋ですが、鶏の白湯スープと鹿のボーンブロスを合わせたラーメンや鹿のカレーも提供したい」と意気込みます。また、ただの飲食店にとどまらず、ワークショップなども開きたいと夢を膨らませます。「協力隊の活動を通じて、本当にやりたいことを見つけました。これまで支えてくれた人たちに感謝の気持ちを込めて、地域に愛される店を作りたいです」。地域の食文化を支えながら、新たな挑戦へ進む中村さん。ジビエを通じた地域活性化の未来が、これからも広がっていきそうです。