くらし しまなみ農業だより

■かんきつ類の日焼け果の発生と対策
ここ数年、西日本では夏の異常高温や局所的な豪雨など異常気象が続いています。今年は6月27日に観測史上最も早い梅雨明けとなり早い時期から猛暑となりました。屋外で作業をすることの多い農家の皆さんは熱中症には気を付けていただくとともに、今後、かんきつ類の日焼け果の発生が心配されます。今回はかんきつ類の日焼け果について解説します。

[1]かんきつ類の生育と天候
多くのかんきつ類は、5月に開花し結実した果実は梅雨時期(6月)の生理落下を経て、夏から秋にかけて肥大します。8月頃から果実内に果汁が入り始めますが、夏から秋に晴天日が多く土がよく乾くと、根から余分な水分の吸収が抑えられ果実の糖が凝縮するため美味しい果実になります。しかし、近年の夏は気温が異常に高く、果汁が入り始める8月頃から果皮は薄く柔らかくなるため連日の強い日差しを受け続けると果皮表面の高温により組織がダメージを受けて回復できずに日焼果となります。果実表面の温度は、直射日光下では外気温よりも5℃程度高くなるといわれ、人間も強い日差しを受け続けると皮がむけたり火傷のような症状となることをイメージするとわかりやすいと思います。

[2]日焼け果の症状
日焼果は、樹冠の上部や外周部の太陽光のあたりやすい果実に発生しやい傾向があります(図1参照)。
症状は、果実の陽光面の果皮が部分的に黄色く変色し、症状が進むと黄色の中心部が茶色になります。このような日焼けした果実の内部は果汁が入らない「す上り果」となり品質低下の要因になります(写真1参照)。日焼け果は、表皮の黄色の変色部は果実が着色すると区別ができなくなりますが「す上り」は収穫時も治ることがないので正常果に混じって販売されると消費者からのクレームのもとになるので注意が必要です。また、日焼け果の発生は品種による差があり、早生温州、せとか、紅プリンセス(愛果第48号)などで発生しやすいですが、西向きの日当たりのよい園地では品種を問わず発生しやすいので注意しましょう。被害果は着色期までに除去しましょう。

[3]防止対策
天成り果や軸が太い上向き果実、葉が少ない外周部の果実は、太陽光があたりやすく日焼け果が発生しやすいので摘果時に取り除きましょう。果実の重みで下垂する枝に成らせるなど着果部位に気を付けます。次に、物理的に直射光を遮るサンテ(筒状の被覆資材)やクラフト(紙)テープで果実陽光面を保護することや果実に散布する日焼け防止資材(ホワイトコート、クレフノン…主成分は炭酸カルシウム)が被害軽減技術として行われてきました(写真2)。サンテはアザミウマ類の被害の発生やクラフトテープは持続期間が短い、汚れが問題となることが課題です。ホワイトコートは、250倍液を7月末頃から1か月おきに2回散布を行うと被害が軽減できますが、薬斑が取れにくいので出荷時に薬斑をふき取らなければならないことなどが課題です。

[4]おわりに
近年の夏期の高温が平年化しつつあり、作業者の健康にも悪影響を及ぼすばかりでなく果実品質にも大きなダメージを及ぼします。栽培管理面では潅水不足は日焼果を助長するので定期的な潅水を行うこと、日焼けしにくい着果部位に成らせる高温対策を前提とした樹形や剪定方法の改善が必要です。

※詳細は本紙をご覧ください。