- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県内子町
- 広報紙名 : 広報uchiko 2025年8月号
■言葉に耳を傾け、記憶にふれ、思いを巡らせる それが未来の平和に
内子町遺族会 会長 本田富雄(とみお)さん(78)〔立石〕
○祖母と母から、戦争を語り継ぐ
私の叔父・昇(のぼる)は31歳のころ、昭和20年5月に沖縄県で戦死しました。本田家には今でも写真や勲章、寄せ書き国旗などの叔父の遺品が大事に保管されています。祖母や母にとっては、遺品を見るのはつらかったかもしれません。でも叔父が生きた証として残しておきたかったのだと思います。私は戦後生まれで戦争を体験してはいませんが、もの心ついたころから遺品を見せてもらったり、叔父の話を聞かされたりしていたので、戦争がどれほど悲惨で、多くの命や人生を奪うものであったか、想像するようになりました。
○戦争の記憶をなくさないために
戦争が終わって80年が経ち、当時を知る人の声を直接聞ける機会は少なくなっています。語り継ぐ人が減ってしまえば、戦争の記憶はいずれ失われてしまいます。今の平和な暮らしを当たり前のように感じている人も多いかもしれませんが、この先もずっと続くと保証されたものではありません。だからこそ戦争の恐ろしさや平和の尊さを次の世代へ伝えていくことが大切だと思います。戦争を体験した人の言葉に耳を傾け、その記憶に触れること。それが未来の平和につながる一歩になるのではないでしょうか。
○戦没者を悼み 思いを巡らせて――
内子町遺族会では町内にある二つの慰霊塔の手入れや、平和の大切さを語り継ぐ活動をしています。龍王城跡にある慰霊塔は、毎年8月13~15の3日間は開放していて、一般の人も塔内に入ることができます。塔内には720人の兵士の遺影が並んでいます。国のために命を捧げた若者の思い、彼らを見送った家族の悲しみに思いを寄せると、いたたまれません。この場所を訪れて戦争のつらさや平和の尊さについて思いを巡らせてみてください。一人でも多くの人が平和について考えるきっかけになることを願っています。
■子ども達と一緒に考えた戦争の記憶を受け継ぐこと――
自治・学習課 学芸員 太尾友香(ゆのか)さん(24)
○地元の戦争体験に学ぶ内子小学校の平和学習
内子小学校では毎年、6年生が平和学習を行っています。これまでは地域の人が講師を務めていましたが、今年は学芸員の私も講師で呼んでもらい、内子町の戦時中の暮らしを子ども達に紹介しました。講演では「戦時中は食糧難で運動場を畑にしていた」「芋あめがおやつだった」など、これまでに地域の人たちから集めた戦争の体験談を話しました。
千人針や竹槍といった実物にも触れてもらい、当時は誰が、どんな思いで使っていたのかを想像してもらいました。子どもたちからは「家族に戦争の話を聞いてみたい」「戦争は二度としたくない」「平和のありがたさが分かった」などの感想が寄せられ、とてもうれしく思いました。戦時中と現代を比べることで、平和が当たり前ではないと気付き、「戦争とは何か」を考えるきっかけにもなったと思います。
○物や話を通して戦争の記憶を受け継ぐ
現在、内子町では戦後80年の節目として、町内各地で巡回展を開催中です。私も展示を準備するにあたって、地域の人たちから戦争体験を伺い、教科書にはないリアルな声に触れることができました。戦争を知らない私たちのような若い世代が戦争の記憶を受け継ぎ、バトンをつないでいくことが大切だと感じました。皆さんもこの機会に展示に足を運んでもらい、当時の写真や道具を見て、戦争の記憶に触れてみてください。そして、家族や地域の身近な人と一緒に、戦争について話してみてください。
■まちの戦争の記憶に触れて、感じて――
展示を見たり、冊子を読んだりして、考えてみませんか。戦争のこと、平和の尊さ――
○戦後80年夏季巡回展「内子と戦争」
戦時中の内子町での暮らしを当時の写真や資料、体験談を通して紹介しています。各自治センターを巡回し、展示をしています。
場所/期間:
・五十崎自治センター 7月31日(木)~8月13日(水)
・内子自治センター 8月15日(金)~8月27日(水)
・内子東自治センター 8月29日(金)~9月12日(金)
時間:午前9時~午後5時(平日のみ)
問合せ:自治・学習課生涯学習係
【電話】0893-44-2114
○『私の戦争体験記』と紙芝居DVD
町内の皆さんの貴重な戦争体験をまとめた一冊。戦争の記憶を次の世代へ伝えようと、平和への祈りを込めて作られました。(1冊1,000円で販売)
問合せ:保健福祉課高齢者福祉係
【電話】0893-44-6154
○広報うちこ2015.8月号特集 戦後70年語り継ぐこと
戦後70年を特集した号です。今月号と併せてぜひ読んでみてください。