- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県内子町
- 広報紙名 : 広報uchiko 2025年10月号
■「ネイティブ?」
上田和夫(かずお)さん(51)〔内子8〕
「和夫、しょうべん!車止めてくれや」「お父さん、ちょっと待ってや、トイレまで行くけん。そがいな場所でやるわけにはいかんかろうがい」「かまん、かまん。そこでやるけん」「いやいや、かまうけん!」なんてことない父との車内での会話。しかし、僕にはほんの少しの緊張があります。
18歳で愛媛県を離れて約30年、そのほとんどを北海道で暮らしていました。内子町に戻ってから3年も経っていない僕は、故郷の言葉をすらすらと話すことが今だにできないのです。それは家族以外の人に対しても同じこと。愛媛で暮らす「伊予弁ネイティブ」と話すときには、頭と口を意識して方言モードに切り替えなければなりません。
もちろん地元の言葉を使わなくても、言いたいことや気持ちをくみ取ってはもらえます。それでも、やはりその土地の言葉を使えることが、住む人々に受け入れてもらうための条件の一つでしょう。
先日、在日外国人と話したときに、その思いをさらに強くしました。会社では英語しか話さないので日本語が上達しないという彼の悩みは、故郷の言葉をうまく話せない僕自身の姿と重なって見えます。彼が日本社会に受け入れてもらおうと懸命に努力しているように、僕もまた、この地域に改めてなじもうとしているのだと気付きました。
いつになるか分からんけど、伊予弁だけじゃのうて、内子弁も、構えんで話せるようになったら、迷いなく「僕は内子の人よ」と言えるんかもしれんのう。
次は、加藤毅さん〔長田〕にお願いします。
