くらし 移住をサポート!「カワラカケル」が奮闘中

香春町に新たなにぎわいを生み出そうと、令和6年4月に一般社団法人として発足した「カワラカケル」が奮闘しています。移住相談は以前の6倍ほどに増え、発足後1年間で福岡県内外から8件の移住をサポートしました。自らも移住者で会長の小野沢春輝さん(31)は「香春の住みやすさや魅力をありのままに伝えてマッチングし、地域の活性化につなげたい」と力を込めます。

■「香春町移住・空き家相談室」の主な業務
(1)移住や空き家の相談
(2)移住前後のサポート
(3)空き家バンクの運営
(4)来町者を増やすイベント
(5)SNSやウェブでの情報発信

■採銅所駅を拠点に
カワラカケルは、共に町地域おこし協力隊OBの小野沢さんと、福羽弘之さん(40)の2人で設立。以前は町のまちづくり課と住宅水道課がそれぞれ所管していた「移住相談」と「空き家対策」を一元的に担い、「香春町移住・空き家相談室」として移住希望者らへのスムーズな対応につなげています。
町が所有するJR採銅所駅の管理も任され、駅舎内の「第二待合室」が活動の拠点。今年4月に協力隊に就いた原田野々花さん(24)とも連携し、移住希望者の相談や、観光客らへの自転車の貸し出し、イベント開催などを行います。

■相談が大幅に増加
法人発足1年で、町外から受けた移住相談は90件、空き家に関する町民からの相談は56件、また、町内での移住や事業開始といった「その他の相談」は64件を数えます。実際に町外から8件の移住が実現しており、このうち4件が県外(東京、愛知、埼玉、神奈川の4都県)です。
移住相談は、法人発足前の令和5年度に町が受けた件数の約6倍、空き家相談も約5倍に増加。小野沢さんは「空き家情報も把握しているので、移住希望者にマッチする物件を紹介しやすい。ウェブ更新の頻度も高く、インターネットなどで移住先を探している人のニーズに応えられているようです」と好調の要因を分析します。

■協力隊の活動を経て
小野沢さんは神奈川県出身。24歳までは警察官として活躍しましたが、地方への移住に関心を持つように。縁を得て、平成31年1月に香春町地域おこし協力隊員に着任しました。
3年間の任期の最中、コロナ禍に見舞われ、計画していた交流イベントは軒並み中止になりました。一方で、「密を避ける」という社会意識の変化もあって移住の相談が増加。専従のメンバーで移住相談に対応できる体制づくりが進められ、昨年、一般社団法人の設立に至りました。
茨城県出身の福羽さんは、かつての勤務先の異動で北九州市に転居。香春町には趣味の山登りやマウンテンバイクのためによく訪れていました。「こんな場所で生活したい」と一念発起して令和3年4月~6年3月に地域おこし協力隊を務め、退任後は同法人を立ち上げて、引き続き町で暮らしています。

■活動メンバー紹介
▽小野沢春輝(おのざわはるき)さん
神奈川県出身。平成31年に香春町の地域おこし協力隊として着任し、地域コーディネーターを経て、移住促進や空き家の利活用を進める。
▽福羽弘之(ふくばひろゆき)さん
茨城県出身。令和3年に地域おこし協力隊として香春町に移住。野外活動を通じて地域コミュニティーの育成や魅力発信に取り組む。
▽原田野々花(はらだののか)さん
北九州市出身で、大学では地域活性化策などを学んだ。今年4月に香春町地域おこし協力隊員になり、カワラカケルと連携して活動している。

■ほかにない「人のよさ」
6年以上を香春町で過ごしている小野沢さんは「住みやすいから、ここにいる感じですね」と飾らない言葉で町の魅力を話します。
「買い物に困らず、遊びにも、飲みにも出かけられます。でも里山の風景が残っていて、地域の人とのつながりもある。困ったら相談できる誰かがいる、というメンタル的な暮らしやすさも大きいです」
福羽さんも「住民の皆さんがよい人というのは、本当にその通り」と声をそろえます。「毎日のように野菜やお米を分けてくれたり、家に帰ると『ご飯、食べに来ん?』と誘ってくれたり。都会にはない『非日常』に、どっぷり漬かっています」
共に県外出身者である2人のアドバイスは、移住を検討する人たちにも有益なものとなっているようです。

■移住は「始まり」
カワラカケルは今後、移住促進策の強化や、空き家対策の効率化などをさらに進める方針です。小野沢さんは「移住には仕事をどうするかも大事。そんな生なりわい業に関する相談にも対応できるように、役場とも意見交換しながら準備したい」と進化を目指します。
移住者のアフターフォローにも力を入れています。「移住は始まり。地域に根付いていただくことが大切」と、地域の人の紹介などにも奔走。ウェブでは令和6年から、移住者を紹介するブログ「カワラびと」を開設し、記事を増やしています。
「移住促進やまちづくりはアイデア勝負、とも言われます。ただ、自分たちは当たり前のことをきちんとやっていくことを心がけています」と小野沢さんは言います。
地に足を着け、ありのままの香春のよさを丁寧に発信して、地域の未来をつくっていきます。

■カワラカケルの相談対応件数(令和6年度)

※町民の町内での転居、町内での新店開業や営農などの相談