くらし 輝く島原人 THE SCENE Vol.89 島原に生きる

「人生の達人」
下田一博(しもだかずひろ)さん(79)
昭和20年、旧満州で生まれる。ソ連侵攻による引き揚げで翌年に母の生家がある崩山町へ。地元高校を卒業後、跡取りとして就農するも25歳で東京の国際電信電話株式会社(KDD)に入社。平成29年、70歳で島原へ帰郷。帰郷した翌年に崩山町町内会長に就任し、町内会や自主防災会活動などに積極的に取り組み、地域の活性化やコミュニティづくりに尽力している。また、有明ボカシの会では、生ごみを発酵させた有機肥料づくりに取り組み、生ごみの減量、無農薬でおいしい野菜作りの実践・普及活動にも力を注ぐ。崩山町町内会長(H30~)、白山地区自主防災会会長(R5~)、白山地区町内会連絡協議会副会長(R5~)など。崩山町在住。

■みんなで築く地域防災
崩山町内会(白山地区)の会長を務める下田一博さん。東京から帰郷した翌年から町内会長を努め、さまざまな地域活動を通じて顔の見える関係づくりや自主防災活動に積極的に取り組んでいます。
「町内会長は7年目になります。お盆には町内会で精霊船を出しますが、暑い中、小学生から高齢者まで協力して手作りで製作しています。そして、健康とコミュニケーションづくりのためのグラウンドゴルフは年間通して活動しています。年齢を問わず楽しめるので、町内の皆さんに声掛けをして、この数年で愛好者がとても増えました。昨年の白山地区グラウンドゴルフ大会には町内会対抗の部で最多の5チーム(15人)が参加し、Aクラスで優勝と3位の好成績を収めました。」と、笑顔で語ります。

▽地域防災活動のリーダーとして
町内の危険箇所や避難経路、支援が必要な高齢者などの把握や自主的な訓練に取り組み、令和5年度からは白山地区自主防災会の会長に就任しました。「東京の会社に勤めていた頃、超高層本社ビルの防火管理を経験したこともあり、前会長から引き継ぎました。同じ地区内でも山に近い方、海に近い方、住宅密集地など、住んでいる場所や状況などで防災への意識に温度差があると思います。全国で頻発する大規模災害をよそ事だと感じている人も多いのではないでしょうか。いつどこで発生するかわからない災害を自分事として意識してもらえるよう、避難訓練などを通じて啓発活動に取り組んでいます。」
また、「概算ですが白山地区では人口の約1割の方が支援を必要とされています。自主防災会として『助けを必要とする方々を取り残さない』ことを念頭に、要支援者を把握するため「あんしん支え合い活動」をより広めたいとも考えています。ある高齢者は「災害時、自分ではどうすることもできない。町内会に助けてもらわねばならない」とおっしゃいました。災害時に力を発揮するのは、その地域を知る町内会・自主防災会です。活動の大切さをぜひ知ってもらい、多くの住民に参加してもらいたいですね。」と、地域防災への思いを語ります。
何事にも前向きに取り組む下田さん。有明ボカシの会では生ごみを発酵させた肥料を使い、無農薬で美味しい野菜づくりを実践し、市内小学校で指導も行っています。「野菜づくりは家庭菜園で妻が熱心に取り組んでいて、ボカシを使った生ごみ堆肥の土づくりは私の担当です。生ごみ減量にも役立ちます。
安全な食とグラウンドゴルフ、そして心ある仲間との地域防災活動が元気の秘訣。現役時代は仕事ばかりで家族や妻には迷惑をかけてきたので、恩返しの気持ちで社会活動に取り組み、少しでも地域のお役に立てればと思っています。」と、語っていただきました。