くらし [町の話題] 令和7年度 美郷町施政方針(1)

■令和7年3月の美郷町議会定例会において、田中秀俊町長から令和7年度の施政方針が示されました。
本日 令和7年第1回美郷町議会定例会の開会にあたり、町政運営に臨む私の所信と主要施策の概要を申し上げ、町民の皆さま並びに議員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

さて、我が国の経済は、600兆円を超える名目GDP(※)と33年ぶりの高い水準となった賃上げを実現し、成長と分配の好循環は動き始めています。現在は、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあります。
(※)名目GDP・・・GDPを市場価格で評価したもの(⇔実質GDP)
こうした中、政府は、日本経済・地方経済の成長、物価高の克服及び国民の安心・安全の確保を3つの柱とする「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を策定しました。デフレを脱却し、新たな経済のステージに移行することを目指して、「経済あっての財政」との考え方に立ち、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靭な経済・財政を作っていくことを基本方針としております。

一方、全国的に東京一極集中が続く中にあって、他の地方自治体と同様に、本町でも、急速な少子高齢化や人口減少、基幹産業の衰退など、大きな課題を抱えております。

更に、地球温暖化による異常気象は、世界各地に甚大な被害を与えており、本町でも、令和4年の台風14号、一昨年の台風6号、昨年の台風10号により大きな災害が発生しました。一日も早い復旧に向けて万全を尽くしているところでありますが、災害規模が大きい箇所もあり、今もなお、町民の皆様には、ご不便をおかけしております。

このような状況の中、私としましては、諸課題に真摯に向き合いながら、地方自治の本旨に基づいて、効果的な施策を推進してまいる所存であります。また、災害復旧工事につきましても、引き続き国や県と十分に協議を行い、建設業と連携を図りながら、迅速かつ着実に実施してまいります。
美郷町は、私たち町民にとりましても、また地域を離れている方々にとりましても、ここがふるさとです。私は、過疎の半世紀を頑張りぬいた地域が、やがて新しい夜明けを迎える時代が必ず到来すると信じています。今後とも、心の絆をしっかりと結び、田舎の原風景を守りながら、お互いが支えあう地域づくりを目指して精進していく所存であります。

それでは、令和7年度当初予算に係る主な施策につきまして、その概要を申し上げます。

1.農林業の振興
本町の基幹産業である農林業の振興は最重要課題であり、重点的に取り組んでまいります。これまでの施策を継続して実施し、農林畜産業の就業者維持と振興を図ります。

農業の振興につきましては、日本型直接支払制度や新規就農者育成総合対策等、国県の農業政策を活用し、農業生産活動が継続できる体制づくりに努め、農業所得の向上と経営安定を図るとともに、親元就農や事業承継による新規就農者の確保を目指します。また、昨今の情勢を鑑み、物価高騰等、自助努力では解消することのできない要因の対策を行うことで、生産者の営農意欲向上に努めます。関連して耕畜連携を推進し、循環型農業の確立を目指し、遊休農地化の抑制を図ります。

林業の振興につきましては、森林整備計画の基本方針に則り、適切な森林施業を推進し、再造林率日本一を目指すため、特に伐採後の適確な更新を山林所有者や林業事業体に強く促していきます。これに伴う林業事業体の強化や担い手・後継者の確保、人材育成を含め、大規模保安林化、作業道の整備等、様々な事業に森林環境譲与税を活用し実施してまいります。椎茸や木炭等の特用林産物については、生産者の負担軽減と作業の効率化を図る施策により、生産意欲を促し、生産量や品質の向上に努めてまいります。

鳥獣被害対策につきましては、これまでどおり関係機関や団体と連携して、捕獲による個体数削減や防護施設の設置等による対策を強化し、被害軽減に努めてまいります。特に昨年、農作物に多大な被害をもたらした猿の対策につきましては、重点的に行ってまいります。

2.商工業、観光の振興
商工業の振興につきましては、活性化の中心的役割を担う商工会への支援をはじめ、経営基盤の強化や経営環境の改善に取組む町内商工業者や、意欲ある法人・個人等が行う新規起業や事業承継を継続的に支援します。
また、商工会と連携しながら、地域の特性を踏まえた事業を展開し地域経済の活性化に取り組んでまいります。
観光の振興につきましては、アフターコロナの中で観光需要が回復傾向にある今日、コロナ禍前後の観光動機の変化にも対応しながら積極的に展開する必要があります。これまで展開してきた観光ブランド「DRIVE TO MISATO」のプロモーションにより町の認知度も向上しつつあります。今後もこの観光ブランドを承継しながら、体験型、交流型のツアー等の推進を通じて、交流人口・関係人口の拡大を図るとともに、既存の観光資源の整備や新たな観光資源の掘起こしに取り組んでまいります。

3.道路環境・交通体系の整備
地域の基礎的な社会資本である道路整備につきましては、適正な維持管理を行うことにより道路施設の長寿命化に努めます。また、道路に対する住民の関心は極めて高く、生活道路の利便性向上や孤立化を防止し、災害に強い道路機能の向上を図るために、国、県の補助事業及び過疎対策事業を活用し、整備に努めてまいります。
国道につきましては、8月の台風10号により国道446号が甚大な被害を受け、一刻も早い全線復旧を切望するとともに、自然災害から住民を守る生命線「命の道」として道路の整備をあらためて強く感じたところであります。また、国道388号については、門川町松瀬工区の早期の完成と北郷黒木側への早期の事業着手、南郷新屋敷工区の早期の工事完成を関係機関と連携しながら要望活動を行ってまいります。
県道につきましては、西都・南郷線、宇納間・日之影線、東郷・西都線等、計画的な整備が進められていますが、今後も継続して要望活動を行ってまいります。
地域公共交通対策は、通院や通学、買物など、町民の多様な移動ニーズに対応するための重要な施策の一つです。現在、交通空白地帯の解消と住民福祉の観点からコミュニティバス⦅通称:みさとバス⦆を運行しており、特に高齢者の通院に対する需要が高いことから、引き続き地域の移動手段として持続可能な体制を整備してまいります。
また、廃止代替バス路線及び広域的コミュニティバス路線は、日向東臼杵管内を連絡する重要な移動手段であるため、関係自治体とともに(株)宮崎交通への補助や委託により路線を維持してまいりました。慢性的な運転手不足、利用者数の減少など、路線の維持は更に厳しい状況にありますが、ダイヤの改正や車両の小型化など、県や沿線自治体と共に運用システムの抜本的な見直し検討を進めてまいります。