くらし 【特集】霧島とゼロカーボン(1)

~この美しい自然を守っていくために~

ゼロカーボンやカーボンニュートラル、脱炭素という言葉を聞いたことはありますか。霧島錦江湾国立公園の霧島市域がゼロカーボンパークに登録される(10月認定見込み)ことを機に、地球温暖化とゼロカーボンについて考えます。

近年、地球温暖化が原因とされる気候変動が短時間強雨の増加や台風の大型化につながり、日本各地で風水害や土砂災害が発生するなど、私たちの生活に影響が出始めています。
(※)IPCCは、21世紀末の地球の平均気温は、20世紀末と比較して、非常に高い温室効果ガスの排出が続いた場合は約3・3~5・7度、温室効果ガスの大幅な削減が実現した場合でも約1・0~1・8度上昇し、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼす恐れがあると予想しています。

(※)気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された政府間組織。

■カーボンニュートラルの概念図

(出典:環境省「脱炭素ポータル」)

■ゼロカーボンの取り組み
このことを受けて国は令和2年10月、30年後の2050年までに温室効果ガスの排出を日本全体でゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。
「カーボンニュートラル」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる同ガスの吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味し、「ゼロカーボン」と同じ意味で使われます。
本市は令和5年2月、市民・事業者・行政が一体となって2050年までに市内の二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」の実現を宣言しました。令和6年6月には、取り組むことの方向性を示した「ゼロカーボンきりしま戦略」を、今年3月には、具体的な取り組みを掲げた「実践ガイドブック」を策定。さらに、霧島錦江湾国立公園に指定されている高千穂・丸尾エリアが、温泉資源や森林・水資源などの豊かな自然の恵み、霧島神宮をはじめ歴史的な文化資源を有することを理由に、同エリアをゼロカーボンパークとして国に登録申請しました。


1950年から2100年までの気温変化(観測と予測)(出典:全国地球温暖化防止活動推進センターホームページ)

■ゼロカーボンパーク発進
「ゼロカーボンパークとは、国立公園内において先行して脱炭素化することにより、美しい自然の保全と持続可能な観光地づくりに取り組むエリアのことです。霧島市がゼロカーボンパークに登録されるのは、全国で21番目、九州では雲仙市(雲仙天草国立公園)、阿蘇市(阿蘇くじゅう国立公園)に続き3カ所目になります」と話すのは、環境省霧島錦江湾国立公園管理事務所えびの管理官事務所の松野壮太さん(32)です。
「霧島市ゼロカーボンパークでは、温泉熱などを活用したエネルギー対策や二次交通でのE-Bバイクike(電動アシスト自転車)の活用促進、公共交通の利用促進、エコドライブの普及啓発、マイボトルの利用推奨などの取り組みを行い、持続可能な観光地づくりを官民一体となって目指すことになります」と続けます。
「霧島錦江湾国立公園は、昭和9年に雲仙、瀬戸内海とともに日本で初めて国立公園に指定されました。韓からくにだけ国岳や高千穂峰に代表される20数座の火山群と、大おおなみのいけ浪池など六つの火山湖を擁し、日本を代表する景観地としてその名をはせています。今回のゼロカーボンパーク登録はあくまでスタートラインです。市や市民だけでなく、訪れる人も私たち環境省も一緒になって、霧島市の自然資源、文化資源を生かした独自のゼロカーボンパークを作り上げていければと思います。霧島市がゼロカーボンパークを持つまちとして、脱炭素の先端を進まれることを期待しています」
霧島錦江湾国立公園の霧島市域はゼロカーボンパークに登録され、さらなる魅力が加わります。この霧島の美しい自然を守っていくために、そして地球を守るために、私たちにできることを考えていかなければなりません。

環境省 霧島錦江湾国立公園管理事務所 えびの管理官事務所国立公園管理官
松野 壮太さん(32)

■霧島錦江湾国立公園(霧島市域)ゼロカーボンパーク
※「霧島錦江湾国立公園(霧島市域)ゼロカーボンパークのイメージ」は本紙PDF版3ページをご覧ください。
・温泉地で地域資源を楽しみ、心身をリフレッシュする「新・湯治」
・森林空間利用などのサービス提供
・竹林、里山林の美観形成と発生バイオマスの活用
・ICTの活用によりテレワーク環境が充実
・シカなどの鳥獣被害対策による生態系の保全
・直販・物流拠点、公共施設での再エネ蓄エネ・充電インフラ
・サステナブルツーリズム
・地産地消の食やお土産品の提供
・ZEB・木造建築物の導入
・施設の屋根・駐車場に太陽光発電設備を最大限設置
・公園利用施設の木材利用
・水や食品、宿のアメニティグッズなどのロス削減
・エコツーリズム
・温泉熱を利用した熱供給、ヒートポンプ・バイナリー発電の導入
・自動運転バスやe‐bike・グリスロなどによる移動手段の確保
・農泊・ワーケーション
・薪(まき)ストーブや薪ボイラーなど木質バイオマスの熱利用