くらし ≪特集≫木と生きる J‐クレジットと新得町(2)

◆木を生かし、活かす。
西十勝森林組合で働く職員の方からお話を聞きました

▽代表理事組合長 村岡 昇さん
―J-クレジットの取り組みについてどう感じていますか?
林業は木が育つまで長い年月がかかる産業で、収益が出るのは約50年後というのが一般的でした。しかし、J-クレジット制度は“育てている途中でも収益が得られる”可能性があるということで、大きな期待を持っています。
ただし、制度の仕組みは非常に複雑で、申請や認証には高額な費用や専門的な作業が必要です。
さらに、伐採による炭素吸収量や、樹木の成長量の計算など、技術的にも難易度が高い取り組みと率直に感じており、新得町の取り組みを協力・支援しつつ、森林組合独自でも今後取り組んでいきたいと検討しています。

―本制度に期待する点はありますか?
「植えた木が収益になる頃、自分はもう現役ではない」という考えが根強い中、育成中に得られる収入があることで、「今やる意味」が生まれ、林業に携わる人たちが、今まで以上に自分事として捉えるようになるのでは、と考えています。
また、森林のCO2吸収源としての価値が認識されることで、山林が“宝の山”として再評価されるきっかけにもなると考えています。

―将来に向けた制度改善への期待はありますか?
クレジットの買い手(企業)の増加により市場が広がることを期待しています。
また、森林環境税などの活用とあわせて、所有者の負担を減らしつつ、再植林を進められる循環を構築できることが重要だと考えています。

▽早坂 海人さん
―林業の道を選んだきっかけはなんですか?
親族が林業に関わっていたこともあり、自然の中で働く姿に魅力を感じ、高校卒業後は林業の専門学校へ進学しました。

―1日のスケジュールを教えてください。
夏季の間は朝5時に出勤し、6時頃には現場へ到着し、仕事を開始します。途中昼休憩などをとりつつ、12時30分頃事務所に戻り13時に業務終了となります。

―主にどんな仕事ですか?
今は、植えた木が健やかに育つよう、樹木の周りの「草刈り」が主な仕事です。秋になると「間伐」という、大きな樹木を育てるために周囲の小さな樹木を間引きする作業も始まります。現場がきれいに整った時の達成感は格別です。

―どんな職員を目指していますか?
間伐などで木を倒す際に、チェーンソーを使って狙った方向に倒すことなど、技術的に優れた職員が身近にいるため、大変勉強になります。そのような職員になれるよう日々努力しています。

―新得の自然や森林管理において目指している目標はありますか?
「誰が見ても“きれいな山”と感じられる山林」をつくるのが目標です。大きく育った木が整然と並ぶ、管理が行き届いた山が理想だと思っており、そのためにも地道な草刈りや間伐が欠かせません。未来に胸を張れる森を残していきたいです。

◆クレジットを活用するための必要な手順(令和7年8月現在)
[STEP1]温室効果ガスの削減・吸収方法をまとめた「プロジェクト計画書」を作成し、登録を申請する。→済
[STEP2]「プロジェクト計画書」に基づき、温室効果ガスの削減・吸収量を計測する。→済
[STEP3]削減・吸収量を算定し、「モニタリング報告書」を作成してクレジットを申請する。→未 令和8年3月認証予定
[STEP4]認証されたクレジットを販売し、その収入を活用する。→未 認証後活用予定

◆J-クレジットと新得町
新得町が取り組むJ-クレジット制度は、CO2の吸収量を「見える化」し、環境価値として取引できる仕組みです。温暖化対策というグローバルな課題に対し、私たちの暮らす地域が貢献できるこの制度は、まさに“森の力”を生かした持続可能なまちづくりの第一歩と言えるでしょう。
今回の取り組みには、町内の森林組合をはじめ、木に携わる方々の協力が欠かせません。J-クレジットの創出は、そうした方々の努力が環境保全という形で評価される仕組みであると同時に、持続可能な森林管理の後押しにもなります。
町では今後も、森林の適正管理を進めながら、関係者や町民の皆さんと連携し、クレジット創出を広げていきたいと考えています。J-クレジットは、環境・経済・暮らしの調和をめざす、新得町らしい挑戦です。
未来の子どもたちに誇れる森と地域を残していくために、皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

●北海道の木を使った施設[HOKKAIDO WOOD BUILDING(北海道ウッドビルディング)]
建築物の構造材や内装材、外装材に北海道産の木材を使用し、PR効果の高さなどを基準に認証される「HOKKAIDO WOOD BUILDING(北海道ウッドビルディング)」に登録された施設が新得町内に3箇所(西十勝森林組合、新得町役場、地域交流センターとくとく)あります。

→産業課林務係
【電話】64-0525