くらし 令和7年新春座談会 芸術で町おこし(2)

■久慈で活動する良さと課題
市長:久慈で活動する上でいいなと思うこととここは改善でないかと感じることがあればお聞かせください。
山下:昨年は、お絵描き教室や子ども向けのワークショップを開催しました。開催にあたり、あーとびる麦生のボランティアや会場を貸りたよむのすの皆さんにさまざまな面で協力していただきました。周りの人が快く協力してくれるところがいいなと思いますし、助けられています。
難しいと感じる部分は、久慈の皆さんは新しいものに対して一度距離をとるように感じているところです。何度か様子を見てから、参加する気質というか。興味を持って参加してもらうためには、活動を続けていくことが大切だと感じています。朝比奈さんのアトリエやあーとびる麦生のように、行けば作品に触れられる場所があるといいなと思います。
朝比奈:久慈では人の良さを感じています。挑戦を応援してくれる人たちがいて、安心して久慈に来ることができました。一人ではできないことに一緒になって取り組める、挑戦しやすい環境があると思います。
こうだったらいいと思うのは、住む環境について。山根に移住者を呼びたいですが、住む場所が整っておらず心から山根に来てと言えない状況にあります。不便な面もありますが、住む場所が整えば、自然に囲まれた山根に魅力を感じる人がいると思います。
関上:久慈の良さは、つながりを強く持ってくれる人が多いことです。久慈の活動の原点は、カフェを経営している嵯峨恒宏さんとの出会いからでした。そこからさまざまな人とつながり、今があります。
課題と感じる部分は、活動できる場所の確保が難しいことです。若者を応援する「SPOT LIGHT」というイベントを、市民センターを会場に2回開催しましたが、団体利用も多く希望の日を確保することに苦労しました。集客のためにもテレビに出ているようなアーティストを呼ぶ考えがありますが、その場合も会場の確保が課題になってくると感じています。
小笠原:久慈は他の地域と比べて、文化的な活動は多いと感じています。アンバーホールではゲストを呼んで催しをしていたり、市民文芸賞で作品を募集し表彰していたり、おらほーる劇場もその一つです。
その中で一つ思うのは、市民文芸賞で戯曲や短編小説を募集して表彰しているのに、次につながっていないということです。せっかく募集したのであれば、上位作品を劇にして上演すれば、演劇や音楽関係の人が集まっていくのではないかと思います。
市長:ステージにあげるという案は面白いですね。劇をやっているとなれば、文芸賞の関係者以外の市民からも注目されそうです。
小笠原:外に発信がないことももったいないです。取り組みを広く発信して、興味を持った人を巻き込んでいけば面白いのではないでしょうか。周りの人を巻き込めないと、良い活動をしていても先細って無くなってしまいます。
熊谷:来館する人の多くは、市外から来る人です。絵しかない美術館と思う人もいるようですが、子どもからお年寄りまでさまざまな人が作った作品が展示されています。一度訪れた人からは評価が高く、再び訪れてくれることも多い。市民の人にももっと訪れてほしいです。
市長:山根やあーとびる麦生に、距離を理由に行ったことがないという話を聞きます。実際に訪れたことがないと良さはなかなか分からない。もっと積極的に足を運んでほしいと感じています。

■今後の展望
市長:最後に今後の活動の展望について、お聞かせください。
山下:これまではイベントとして開催してきたお絵描き教室を、月謝制にするなど継続して実施できる形にしていきたいと考えています。昨年は協力隊ポップアップというイベントで、個展を行いました。ゆくゆくは自分の住んでいるまちのなかにアトリエを整備し、現代アートなど普段触れることのない作品を身近に感じてほしいと思っています。
朝比奈:現在20代から30代の若い人を中心に山根を盛り上げようと、新山根六郷会が立ち上がりました。若い人たちを起点にしてイベントを企画し、山根との交流人口を増やしていきたいです。私は絵の分野で、ほかのメンバーもそれぞれの得意分野を生かし、魅力発信に取り組んでいきます。
関上:久慈には若い人が残ってくれないと感じています。自身の音楽活動や人とのつながりの部分で、久慈でもできることがあると思ってもらいたいです。目標はSPOT LIGHTからアーティストを出すこと。久慈を盛り上げることにこだわっていきたいです。
小笠原:今まで通りあーとびるの活動やおらほーる劇場に携わりながら、色々な人を活動に絡めていきたいです。おらほーる劇場のこれまでの劇を販売したり配信したりして、面白いと思った人が劇に参加してくれればいいなと思います。閉校となった雫石にある私の母校は、食堂として活用され、繁盛していると聞いています。久慈でも閉校となった校舎がうまく活用され、拠点のような施設になればいいなと考えています。
市長:市としても閉校となった校舎は、活用してほしいと考えています。市民からこんな場所があればと要望はいただきますが、市の職員で運営していくのは難しい。自分たちでやりたいという人がいれば、市としても全面的に協力します。
熊谷:美術館ではなく、子どもから大人までさまざまな作品が飾られている芸術村ということが浸透してきたと感じています。昨年は、あーとびる麦生の壁に飾る大きな絵を描くワークショップを山下さんの協力で開催。毎週のように親子が訪れ絵を描いて楽しむ様子を見て、自分の夢が叶ったと感じました。人が集まらないと何もできません。気軽に訪れてほしいです。
市長:まちに新しい場所が一つできることで地域の雰囲気は大きく変わります。良い場所があれば、遠くても訪れたいと思う。そうした場所が増えていくとうれしいです。意欲のある皆さんがつながって、いろんな人が動いていくことでまちに活気が出てきます。市としても情報発信に力を入れ、皆さんの活動を後押ししていきます。本日はありがとうございました。