くらし 【特集】地域おこし協力隊(1)

■私たち、地域を興し隊!
地方での生活や社会貢献活動に意欲のある都市部の人材に、地域協力活動を行ってもらい、定住や定着、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度が「地域おこし協力隊」です。本市では現在、7名の隊員が新庄のために活動しています。
今号では、新庄を興すために全国各地からこの地に集まり、活動している「地域おこし協力隊」の皆さんの活動内容や、抱える思いについて、ご紹介します。

■宮城県大崎市×新庄市 地域おこし協力隊クロストーク
▽「地域おこし協力隊」になって感じていることについて、県境を越えて交流しました。
・デジタル活用
富澤 沙知(とみざわさち)さん
所属:大崎市地域おこし協力隊(3年目)
任務地域:
デジタル活用支援業務
デジタルディバイド解消に向けた活動
居住地:大崎市→東京都→大崎市
主な活動内容:シニア向けスマホ教室、SNSでの情報発信 など

・観光コンテンツ
磯部 翔平(いそべしょうへい)さん
所属:新庄市地域おこし協力隊(1年目)
任務:
観光地域づくり推進事業
観光コンテンツ整備、観光情報発信
居住地:大阪府→新庄市
主な活動内容:チラシ・グッズデザイン、観光情報発信、イベント企画・補助、観光デジタルマップの整備 など

・鳴子こけし
渡辺(わたなべ) あかねさん
所属:大崎市地域おこし協力隊(2年目)
任務:鳴子こけし工人(見習い)
居住地:千葉県→大崎市
主な活動内容:鳴子こけしの制作、鳴子こけしを含む大崎市の伝統工芸品の認知向上のための情報発信や販路拡大 など

・新庄亀綾織
宮本 麻衣(みやもとまい)さん
所属:新庄市地域おこし協力隊(3年目)
任務:
歴史・文化財の承継事業
「新庄亀綾織」の「織り」の習得、継承
居住地:熊本県→奈良県→新庄市
主な活動内容:色糸の着尺(着物用の反物)の制作、後輩隊員への指導 など

――皆さんの着任の経緯と、現在の活動を教えてください
富澤隊員(以下、富澤) 元々大崎市の出身で、上京後は演劇活動をしていました。新型コロナの影響で活動を自粛し、就職を考えてホームページの制作について学びました。求職中に大崎市の協力隊募集情報を見つけ、Uターンという形で着任し、今年で3年目になります。
主にデジタルディバイド※1の解消に向けて、高齢者向けにスマホ教室などを企画・実施しています。また、大好きな演劇を生かして、地域に伝わる「化女沼(けじょぬま)※2」に由来する伝説を基にしたパフォーマンス制作に、地元の高校生と取り組んでいます。現在は、退任後の起業に向けた準備を行っています。
※1 デジタル・ディバイド…情報通信(IT)技術を利用できる人と利用できない人との間に生じる情報格差
※2 化女沼…大崎市古川地域の北部にある沼。長者の娘が沼の水を鏡にして化粧していたことから「化粧沼」とも呼ばれる。

磯部隊員(以下、磯部) 私は、妻が新庄出身で、結婚を機に新庄に来ました。ホテルマン時代に培ったプロモーション経験を観光に生かせると思い、昨年5月に着任しました。
昨年は、新庄まつりの時に山車(やたい)やトイレが探しやすいように「観光デジタルマップ」を導入しました。これを活用したデジタルスタンプラリーを「新庄まちなか漫画ミュージアム」で実施しました。今後はさらに市内の掲載店舗を拡大し、観光に使いやすいデジタルマップに育てていきたいです。

渡辺隊員(以下、渡辺) 私とこけしとの出会いは学生時代です。仙台や鳴子温泉に遊びに来たときに、お土産で買ったミニ鳴子こけしがとても愛らしくて、ドはまりしました(笑)。その後、自分のやりたいことを見つめ直した時に「こけし!」と思い、大崎市の地域おこし協力隊に応募しました。もちろん経験は無く、ゼロからの修行でしたが、師匠には「まだまだだね」と言われながらも優しく厳しく教えていただいています。着任して2年目になりますが、残り1年の修行後には、工人として独立したいと考えています。

宮本隊員(以下、宮本) 高校卒業まで熊本県で暮らした後、奈良県にある着物専門学校に進学しました。先に協力隊として着任していた2つ上の学校の先輩が就職先紹介で学校に来た時に、「新庄亀綾織」のサンプル品を見せていただいて「私も織ってみたい!」と思い、勢いで新庄に来ました。
現在は、江戸時代から続く新庄亀綾織の伝承や、機織り技術を学びつつ、後輩隊員への指導も行っています。

――各隊員の自己紹介で、気になった点はありますか?
富澤 磯部さんは結婚を機に移住されたとのことですが、不安はありませんでしたか?

磯部 元々人混みが嫌いで、自然のアクティビティが好きなので、不安はありませんでした。実際に住んでみると、新庄・最上地域は娯楽は少ないですが、衣食住には困りませんね。人間関係もゼロからでしたが、仕事を通して関係が築けますし。ただ、新庄での越冬は初めてなので、戦々恐々としています(笑)。

渡辺 大崎も住環境は似ていますね。それこそ宮本さんは熊本から来て、不安はありませんでしたか?

宮本 元々織物だけを考えて飛び込んできたので、特に心配はありませんでしたね。専門学校の先輩隊員が2人いて、住居も同じでしたし。冬でも歩いて買い物に行けるし、生活できちゃったので、焦りみたいなのもないですね(笑)。

渡辺 知らない土地に飛び込んで生活する協力隊には、それくらいの根性が必要かもしれないですね(笑)。