- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県朝霞市
- 広報紙名 : 広報あさか 2025年11月号
■「平等」と「区別」のあいだで
男女平等は、社会における当然の前提であり、性別を理由に差別をしてはならない――それは、法令で規定されているルールであると同時に、一人ひとりが胸に刻むべき倫理でもあると私は考えます。しかし同時に、男女には生物学的にも社会的にも、役割や感じ方に違いがあることも事実です。だからと言って、すべてを“同じ”にすることがよいのでしょうか。本当の意味での「平等」と言えるのでしょうか。例えば、都内の複合施設のトイレをめぐる事例で、開業当初に設置された誰もが利用できる“ジェンダーレストイレ”があります。男女の区別をなくしたユニバーサルデザインで、性的マイノリティの方など、多様な背景をもつ人々に配慮した先進的な取り組みでした。ところが実際に利用が始まると、「視線が気になる」「子どもに安心して使わせられない」「入りづらい」など、プライバシーや心理的な抵抗感から、利用をためらう人が続出しました。結果、利用率は下がり、トイレは従来通りの「男女別」と多目的トイレに再設計されることになりました。
この出来事は、「平等」を追求するあまり、「違い」を後回しにしてしまったときに起こりうる“使いづらさ”を、私たちに教えてくれています。大切なのは、“違い”を認めたうえでの“尊重と配慮”ではないでしょうか。同じではないけれど、どちらも大切にすること。たとえ役割や感じ方が違っても、尊重すること――そんな視点で社会制度を考えることが、真の男女共同参画につながると感じます。男女共同参画の推進とは、誰かが“我慢”することではなく、誰もが“安心して生きられる”社会の土台を築くことだと考えます。そのために必要なのは、「差別をなくす意識」と「合理的配慮を実践する力」となります。私たち一人ひとりが、違いを受け入れ、活かし合う姿勢こそが、持続可能な未来をかたちづくるのだと思います。
※このコラムは、「男女平等推進事業企画・運営協力員」と協働で、日々の生活の中で感じている「男女平等」について執筆しています。
問合せ:それいゆぷらざ(女性センター)
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