子育て 〈シリーズNO.60〉子育てコラム

■「子どもと本をつなぐには」
山武市成東図書館 館長 大石 由香
「あなたがはじめて読んだ本は?」と聞かれたら、どの本を思い浮かべますか。
私は、小学二年生になってすぐ盲腸で入院した時に、母に読んでもらった本が思い浮かびます。厳密にいえば、小学生にはなっていましたし、「はじめての本」ではないはずなのですが。
それはおそらく、当時(約50年前)は少数派だった「職業婦人」で忙しかった母が、毎日病室に来てくれて、じっくり本を読んでくれたという体験を伴っていたからだと思います。
本はあるだけではだめで、子どもと本をつなぐ事が大切と言われています。本当にそのとおりだと思います。私も、母が本を読んでくれた体験があってはじめて、本の楽しさや素晴らしさを知り、本が意味のあるものになりました。あの一週間がなければ、私は今図書館で司書として働いていなかったかもしれません。

[育児中のお母さんに]
母つながりで、育児中の方に絵本を二冊紹介します。
なっちゃんは、家に赤ちゃんがやってきて、お姉ちゃんになりました。なっちゃんは赤ちゃんを抱いているママと手をつなげません。そこでママのスカートを「ちょっとだけ」つかみます。今までママにしてもらっていたパジャマに着替えること、髪の毛をむすぶことなどを、自分でがんばって「ちょっとだけ」成功します。小さな女の子の、お姉ちゃんとしてがんばらなくてはという気持ち、ママに甘えたい気持ち、そして赤ちゃんへの複雑な気持ち。
最後に、「ちょっとだけ」だっこしてと言ったなっちゃんにママは「いっぱいだっこしたいんですけどいいですか」と答えます。
優しい絵と状況の良く伝わるシンプルな文章の絵本です。お兄ちゃんやお姉ちゃんの立場の方や、育児中の方にぜひ読んでいただきたい本です。
次に紹介する本は、デーヴ・ピルキー作の『ハロウィンナー』です。
犬のオスカーは足が短く胴が長い犬です。オスカーはそのせいでみんなに「ウインナー」と笑われ、いつもむしゃくしゃしています。そんなオスカーにお母さんが用意したハロウィンの衣装はホットドックのパンの服!
お母さんの無神経さと、お母さんをがっかりさせないためにしぶしぶ服を着るオスカー。犬が主人公の絵本ですが心情は妙にリアルに描かれています。
絵本のなかのお母さんは素晴らしい人が多いです。素晴らしすぎて少し息苦しく感じていたようで、私はこの絵本を読んだ時、笑った後に妙にほっとしました。
どちらも、子どもも楽しめる本です。家族で読んでみてくださいね。

[読書って役に立つの?]
ゲームや動画サイトなど映像文化が日常化し子どもの読書離れが問題となっています。子どもと本をつなぐには、まず大人が本に親しむことが大切ですが、読書離れは、大人でも深刻な問題です。そこで、読書について考えてみましょう。
読書の有用性について書かれた本はたくさんありますが、とても腑に落ちた本です。著者は、東京大学経済学部を卒業後リクルートへ入社、東京都で初の義務教育の民間校長となった人です。
著者は、小学から、高校までまったく本を読まない子どもだったそうです。成人してからあこがれの先輩や仕事関係の社長の影響で読書をするようになりました。その後病気になり、「本を読む時間を楽しむ人生があること」を知り、読書が「自分の意見をつくり上げる」という事に気がつきます。
一定期間、読書経験のなかった人が読書について書いており、司書や読書が好きな方が「読書っていいよ」というより、客観性と説得力があります。「読書なんて」と思う方はご一読いかがでしょうか?
今回ご紹介した図書は、市の図書館で所蔵しています。手に取っていただければ幸いです。