くらし 特集 みんなで紡ぐ としまの文化 (2)

◆子どもをはじめ区民全員が文化の力で心を豊かに
○基本計画の「文化の裾野を広げる」という言葉にはどのような意図があるのでしょうか?

高際
背景には、コロナ禍の3年間で浮き彫りになった「区民の孤独・孤立」があります。経済的な事情を抱えるご家庭、障害のある方、日本語が不自由な方だけでなく、生活に困っていると感じていない方々の中にも、人との交流が減少し、心の不調が見られました。この出来事をきっかけに、文化と人、人と人、“みんながつながる”まちを目指し、基本構想・基本計画において、「誰もが文化に触れられるまちづくり」を掲げました。暮らしの中に文化を広げて、区民の皆さんに文化芸術のもつ豊かさを届けていきたいですね。

鈴木
当劇場では「誰もが文化にアクセスできる」ことを意識し、入館してすぐの位置に「アクセシビリティデスク」を新設しました。障害のある方、高齢者、日本語が不自由な方などをサポートしています。これまで劇場に足を運びにくかった方々にも来ていただきやすくなったと思います。

合場
文化は心の栄養であり、日々の食事や住まいと同じくらい大切なものです。だから豊島区はコロナ禍でも「文化の灯を消さない」と強く宣言されてきたと思います。財団が運営する地域文化創造館※でも、幅広い人々に文化を届けるべく、区民の皆さんの声に耳を傾けて取組みを模索しています。

○文化の裾野を広げるにあたって、特に力を入れるところはありますか?

鈴木
子どもたちに文化的な体験を届けたいですね。次世代への投資は、豊島区の未来のためにも必要なことです。

高際
その通りだと思います。新しいことを知り、好奇心を育む「学び」も文化体験の1つです。地域文化創造館や図書館を活用し、豊かな学びの機会を提供できる体制を強化したいと考えています。不登校の子どもでもアクセスしやすい、学校でも自宅でもない「第3の居場所」という意味でも広げていきたいです。

合場
財団では、今年から「としま文化応援団事業」を始めました。区民の皆さんや企業から賛同金を募り、その資金で文化団体や個人の活動を助成するものです。特に、子どもや若者が参加しやすい文化体験の場をつくることを目指しています。すべての子どもや若者が文化を体験できるきっかけにしたいですね。

高際
「としま文化応援団事業」は、体験する側と支える側の両方を応援する新しい仕組みです。区全体で文化を盛り上げていく風土を一層広げていきたいと思います。

◆多様な地域特性も活かしながら新しい文化を育む
○豊島区には、最先端のカルチャーから伝統文化まで幅広い地域特性があります。
これを踏まえ、今後どのように文化施策を展開していくのでしょうか?

高際
池袋だけを見ても、東と西で異なるカラーの文化を持っています。東口はアニメなどのサブカルの聖地、西口は東京芸術劇場における一流の芸術。それぞれの地域には、特色ある伝統芸能やお祭りもあり、幅広い特性がありますね。文化の支え手も多く、多彩な活動が日々まちに彩りを添えています。「自分たちで文化を育てていく」という区民の皆さんの強い思いが、このまちの文化を支えていますよね。区は、その力を後押ししながら、文化の裾野をさらに広げていきたいです。

鈴木
当劇場の隣にある池袋西口公園には素敵な野外劇場があり、無料でコンサートが行われていることがあります。劇場から出てきたお客様が公園でも音楽を楽しむ光景はとても良い雰囲気です。

合場
都の施設(東京芸術劇場)が豊島区にあるというのを最大限活かし、まちに出ると文化を感じる、そんな雰囲気をつくれたら良いですよね。

高際
そうですね。「人」が主役のウォーカブルなまちづくりを推進している豊島区としては、“外”で音楽を聞いたり、色々な体験をしたりすることも大切にしています。各地域の持ち味を活かしながら、「まちなかに文化・芸術があふれる」豊島区をつくっていきたいですね。文化はまちづくり、教育、福祉などすべての分野に通じる大事な軸です。区民、地域団体、財団、劇場、企業が連携し、文化の力で今まで以上にまちを盛り上げていきます。

※地域文化創造館…地域の皆さんが文化・学習活動や交流を通して豊かな地域社会の実現のために活動する施設(区内5館)。